『Number 572 だからJリーグ』

Jリーグ開幕直前特集。個別記事については随時コメント。
チームに焦点を当てるのではなく選手中心の構成。それも優勝候補の二強であるジュビロアントラーズの選手には多くの誌面を割かず、どちらかといえば大穴と思われるチームの選手に注目している。
中でも我らが浦和レッズの新たな光である坪井慶介は最注目扱い。ミスターレッズ福田正博が引退し、ディフェンスラインの要であった井原正巳も引退した後のレッズの守りの中心、そしてレッズの顔になるであろう坪井。昨年のJリーグ新人賞を獲得し、日本代表にも選ばれた彼はまさに旬の選手と言っていいだろう。

彼の持ち味は何といってもそのスピードにある。そのスピードはDFでありながらフェアプレイ賞を受賞していることからもわかるようにタックルの必要性が全くないほどのスピードだ。しかし、これまで以上のDFに成長するためには、クリーンなままでは物足りないのも確か。時には相手に強烈な一撃を食らわすことで、相手に「怖さ」を感じさせるようでないと真のDFとは言えない。早さと強さと、そして怖さを兼ね備えた新時代の日本を代表するDFになってもらいたい。

個人的には、かつてのマルディーニやブレーメ、今で言うならアルゼンチンのソリンのように守りも攻撃も出来る選手になって欲しい。自陣サイドでは鉄壁の守り、ボールを奪ったら脅威のスピードでサイドを駆け上がる。それが理想。
レッズからはもう一人、今季東京ヴェルディ1969から移籍した野獣エジムンドの記事も載っている。二年前にヴェルディを降格危機から救ったこの男が今季からはエメルソンとEEコンビなる脅威のツートップを形成する。レッズサポーターにとっては頼もしい限りだ。
日本に来てからは嘗ての「野獣ぶり」が嘘のようにベテランとして模範となっているエジムンド。どうか今年も何も問題を犯さず、相手チームの脅威となって欲しい。
今号の最も素晴らしい記事は、FC東京の「キング」アマラオの記事。1995年に来日して以来、FC東京東京ガスだった時代から一貫してこのチームのために戦ってきたアマラオ。そんな彼だからこそサポーターは敬意を表して彼を「キング」と呼ぶ。彼が優勝という有終の美を求めて横浜・F・マリノスに移籍を考えた際のエピソードは涙もの。ラモスやロペス、アレックスといった帰化組に比べると知名度が低いアマラオだが、彼のような選手こそがそのチームを愛するサポーターの心に残るに違いない。もし、彼が引退するようなことがあればFC東京はなんらかの形で彼を称え、チームの歴史として残して欲しいと思う。インタビューの最後の一節にはジーンときた。
最近躍進著しい京都パープルサンガからは初代表に選ばれた黒部と、中村俊輔をもってして「アイツはヤバイ」と言わしめる天才・松井大輔がピックアップ。私は正直、今でも天皇杯をパープルサンガが獲ったことを信じられないのだが、若いチームの持つ勢いというのは恐ろしいものだ。今年は勝ち負けを別にしても面白いチームになるかもしれない。それにしてもエンゲルス監督は凄いなあ。
その他にも、エムボマ藤田俊哉などの選手、岡ちゃんこと岡田武史監督の記事など、なかなかに充実した号である。普段よりも分厚いのは広告だけのせいではないだろう。広告が多いのも、「この号は売れる」とそれだけ思われているということであり、Jリーグが11年目を迎えてますます熟してきたことが窺える。いよいよ開幕が楽しみである。
Jリーグ以外の記事の中では、日本で行われる予定だったアメリメジャーリーグの開幕戦、アスレチックス対マリナーズのトピックが皮肉だ。つい先日中止が決まったばかりなので差し替えが間に合わなかったのだろう。小宮山悟が解説しているのだが、そういや彼は今年どうなったの?。
ボクシングのロイ・ジョーンズJr.×ジョン・ルイス。ミドル級からヘビー級までの四階級制覇に挑戦し、106年振りに王座を勝ち取ったロイ・ジョーンズJr.。格闘技の世界では「階級」という壁を取り払っての真の世界一は誰なのか、ということをファンは常に夢見ている。ロイ・ジョーンズJr.の偉業はそういったファンたちの渇望に答えるものであり、体重だけが全てではないということを改めて示したものだといえる。今後彼がヘビー級で戦い続けるのかどうかはわからないが、この伝説はボクシングの歴史に残り続けるに違いない。
F1の開幕戦の模様も報じられているが、一番気になっているレギュレーションの変化の影響については、まだ一戦目ということもあるのか、詳細には報じられていない。まあ、予選の方式が変わっても結局フェラーリ勢がグリッド一列目を獲得しているということは今年も赤い跳ね馬が暴れそうだということだろう。BARの調子がよさそうなのはちょっと気になるところだ。