BOOKアサヒコム 作家に聞こう 江國香織

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今月は中沢新一だったのだが、先月の江國香織分を読んでいなかった。Q&Aの回答なのだが、妙に心に残る言葉が多かったのでメモ。

主人公にとって重要なのは自分の恋愛や仕事であり、天気なんてどうでもいいのだけれども、「たまたまその日は雨だった」といったことが、物語の客観性のためには大切だと思うんです。悲しいときに土砂降りの雨みたいな効果を狙った自然描写ではなく、登場人物の暮らしや感情に結びつかないところでの自然や季節というのは、いつもきちんと書いておきたいな、という気持ちがあります。

私が執着する「言語」は、コミュニケーションツールとして汎用性のある言葉じゃなく、例えば「おいしいね」という言葉にしても、そのときの声だとか、感情の込め方によってぜんぜん違うものになりますよね。そんなふうに、その人が、その場でしか生み出せなかった言葉なんです。ある程度の共通認識を持たれている「記号」としての言葉ではなく、「一回性」を持った言葉。「一回性」がないと、言葉って美しくないと思うんです。