『Number 582 U-23 '80年代生まれがニッポンを強くする』

shaka2003-08-07

各スポーツのU-23世代を特集。久々に読み応え充分な一冊。
乙武洋匡による大久保嘉人インタビュー。
受け答えがかなり面白い。乙武はインタビューになると真価を発揮する。毎号2ページのインタビューが載っているのだが、今号は巻頭特集という体裁。普通のライターなら聞かないようなことをさらっと聞くので、目新しいインタビューになる。大久保ファンは必見。
先日の世界水泳の100、200の平泳ぎで世界記録を打ちたてた北島康介に関する記事。
これも面白かった。特に、「調子も怪我も関係ない、スタートラインに立ったら全てがリセットされる」という考え方は革新的とも言える。その時の状態がどうであれ、それまでに培ったものだけが本番では全て、というのはなかなか言えないことだが、北島は実際にそれを目の前で見せてくれるのだから。
平井コーチの、「やることだけやっといて、あとは本人に期待しよう」という台詞が北島を端的に言い表している。この選手の真価をまだまだ日本のマスコミは伝えきれていないように思う。
天才少女・福原愛の現在地。
「天才卓球少女・愛ちゃん」としてお茶の間を賑わしたのはそう昔のことではない。この記事では、彼女が現時点で“愛ちゃん”なのか“福原”と呼ばれる一選手なのかという考察を繰り広げている。しかし、「男子、三日会わずば刮目して見よ」という言葉があるが、“愛ちゃん”は驚くべきスピードで“福原愛”へと変貌を遂げていると思う。まだ14歳。少女が大人になったとき、何が待っているのか愉しみに待ちたい。
末續慎吾、100m9秒台への道。
この記事も良かった。高野進、伊藤浩司、そして末續へと続く東海大スプリンター三代の繋がりを通して、日本のスプリントが一歩ずつ9秒台へと近づいていることを書いている。三人が並んだ写真もグッド。惜しむらくはもっと大きな写真で見たかった。
アテネオリンピックから正式種目となった女子レスリング。その中でも55キロ級を争う二人の“女王”、山本聖子吉田沙保里をクローズアップ。
本来ならば7階級あるはずの女子レスリングだが、アテネでは5階級しか実施されない。そのことにより世界に君臨する日本の女王二人がたったひとつの「枠」を巡って争うことになる。今年行われる世界選手権では通常通り二階級に分けて出場するが、いずれ決着をつけねばならない。個人的にもこの二人の決着は非常に愉しみ。さらにいえば、アテネでいくつ金メダルが獲れるのかも。それくらい女子レスリングは日本が強い。メダルを獲ればいやがおうでも注目を浴びることになる。女子レスリングに光を。
U-23 新時代の戦士達。
その他の種目の'80年代戦士たちをそれぞれ1ページで紹介。スピードスケートの大菅小百合自転車競技に転向したのは話題になったが、彼女は第二の橋本聖子になれるか。それ以上になれそうな期待感もある。柔道で田村亮子の連勝を止めた福見友子はまだ高校生。日本女子柔道は田村の後を継ぐ人材を生み出さねばならない。彼女は果たしてそういう存在になれるか。その他にも色々。
U-23くんの半生。
'80年に生まれた人がおおよそどんな感じの人生を歩んできたのかをユーモアタッチでシミュレーションした記事。自分と10年違うはずなんだけど、この記事を読んでいると少なからず自分にも当てはまる部分があるなあ、と思った。
意外なことに'80年代世代、U-23といえば「松坂世代」という図式があるはずなのに、野球の記事はちょこっとだけ。今迄さんざん記事にしてきたからあえて割愛したのかな。
その他の記事。
Jリーグ1stステージで台風の目になったジェフ市原に関する考察。
短い記事だが、オシム監督の悩みを代弁しているかのようで興味深かった。「オシム語録」に関して、「本当のことをしゃべっているわけではない」とおうオシム監督の言葉はどこまで信じればいいのか。それすら術中にはまっている気がする。確かに2ndステージでは市原は研究される。リーグ最終の2試合ではいいところなく終わったが、どこまで行けるのか。個人的に、今見てて一番面白いサッカーは市原なので頑張って欲しい。あくまでもレッズサポーターの私ですが。
レアル・マドリーロナウドロベルト・カルロスのインタビュー。
ロナウドの「こう見えても僕はサッカー選手だよ」には笑った。しかし、冷静に考えればやっぱり凄いチームだよな。あとは守備がどうなるのか。先日のFC東京戦でもマケレレのワンボランチでは無理があった。最終ラインもイエロが抜けた穴は埋められるのか。バルサファンの私としては崩れてくれることを祈るのみ。
室伏広治インタビュー。
今、日本人で最も優れた(能力的に)アスリートは誰か、と聞かれれば私は室伏広治と答えるだろう。清水宏康とイチローも捨て難いが総合的なポテンシャルという意味では彼になると思う。これまでロシア(ソ連時代)の巨漢二人しか投げたことのない84メートル台に遂に侵略。いったいあの身体にどれほどのパワーとスピードが秘められているのか。清水もそうだが、ある一定の領域を乗り越えてしまったアスリートの言葉というのは凡人には理解できない域に入る。このインタビューでも室伏は我々には通じ難い言葉で自らの身体を語るのだが、それは決して胡散臭いものではなく、彼にとっては実証を伴ってのことなのだろう。
清水が内臓筋肉という人間には認知できない筋肉を認知し、動かせるのと同じように、室伏は背骨の骨を個別に、しかも自由に動かせることができる。人間の身体はどこまで進化するのだろうか。
仁志敏久「プロフェッショナルの証明」。
今回もコラムのほとんどが禅問答。「歩きながらボールを拾うように捕れ」。型などない。などなどとてもじゃないが指導者には聞かせられないような言葉ばかり。仁志もそういう領域のアスリートなのかもしれない。
金子達仁「いつかどこかで」。
このコラム自体は大したことないのだが、彼が久々に中田英寿にインタビューしたらしい。8月11日発売の『Number PLUS』で読むことができるようだ。前回のインタビューは確か1999年で、その記事は私の中では10本の指に入るコラムである。これは楽しみ。
「Number EYES」の高見盛の記事も笑えました。
今回はこんなところで。