PRIDE 27 PRIDE GP 決勝戦

既に一週間前のことなので結果情報は知っていたが、やはり試合を見ていないとなんとも言えないので、やっと語ることが出来る。
とはいえ、決勝戦自体がノーコンテストになってしまったこともあり、またも「最強は誰だ?」という結論が持ち越しになってしまったことが残念ではある。よくよく考えると一年半前のこの二人(ヒョードルノゲイラ)の対戦以来、最強決定戦はなんだかんだで持ち越しになっているんだよな。ミルコVSノゲイラという一戦はあったが。
でまあ、総評としては、ヒョードルノゲイラハリトーノフ、ミルコ、これが現在のPRIDEリング上での最強の四人だということだ。小川が弱いとは思わないが、この四人と比べると格が落ちるのは致し方なし。その他のメンツならいい勝負できると思うけど。
結果として、ノゲイラVSハリトーノフは判定でノゲイラだったわけだが、個人的にはハリトーノフの底の見えない強さが印象に残った。というのも、前日の深夜にPRIDEの選手密着番組を流していて、あのハリトーノフVSシュルトという戦慄の一戦を見た各選手の表情を見てしまっていたからだ。ハリトーノフが無表情でシュルトをボッコボコにし、血飛沫が飛ぶ様子を見て、ノゲイラは呆然とし(セコンドは「こいつスゲエ!」と叫びまくっていた)、ヒーリングは「コイツ、怖いよ。いつか人を殺しそうだ」と呟き、ランデルマンは「やめてくれ」と祈り、当のシュルトは「オレは怖かった。早く病院に行こう」とビビリまくっていた。我々観戦者はリング上でのパフォーマンスに目が行き、「○○は××より強い」と考えがちだが、少なくともハリトーノフが他の選手に与えたインパクトと恐怖は相当なものだったと思われる。それが少なからず戦いに影響するのは当たり前のことといえば当たり前なんだろう。まあ、昔のUFCとかならこの程度の流血は日常茶飯事だったのだが(この辺りがグレイシーの凄いところだが)。
で、そのハリトーノフと実際に闘うことになったのがノゲイラだ。確かに試合自体はノゲイラが終始ペースを握り、判定も文句なし。ただ、どこか普通のノゲイラと違った気もする。特に1ラウンド終了後「グラウンドでは必ず勝てる」とセコンドも言っていたのに、なかなか引き込めず苦労していた。変型の腕固めもかわされたし。ただハリトーノフもまたノゲイラというマジシャンの前ではいつものような思い切りはなかった。上になってのパウンドで、どうしてもノゲイラの手が気になって勢いよく打てていない。これがヒョードルだったら迷いなく打ってくるだろう。腕を捕まれたらぶん殴って外せばいい、それがヒョードルの考え方だ。あの時のヒョードルのパウンドは今でも背筋が凍る。結局、互いに決め手を欠いたままゴング。
勝ったのは確かにノゲイラだが、まだPRIDE経験の浅いハリトーノフがここまでやったことに驚き、今後が楽しみというよりは怖くなった。まだ24歳だしね。あと、ノゲイラの怖さというのはグラウンドでの柔術なのは当然としても、それを活かしきっているのは実はあの握力なんだなあと思った。上に乗られて例えガードポジションとはいえ、あそこまで相手の腕を封じられるものではない。あそこで腕を捕まれ、離すことが出来ないからこそ、次の恐怖が相手にはつきまとう。やはり打破するにはヒョードル並みの開き直りが必要なんではないだろうか。あと異常なまでの打たれ強さ。
そしてヒョードル。前述のハリトーノフヒョードルのシーンを表情ひとつ変えずに見つめた男。この男はまったく読めん。GPの全ての戦いにおいてある意味では予想外、そしてある意味では順当に勝ち上がってきた。焦るとか迷うとかそういう感情がないよな。少なくとも私の頭の中ではヒョードルが負けるところってまったく想像できないんだよね。とりあえずノーコンテストになった今回だが、どうやら大晦日の男祭りでGPチャンピオンだけじゃなく、ヘビー級のベルト、おまけに賞金全てをかけた一戦が行われるらしい。楽しみで仕方がない。
そしてもう一人、ミルコ。ヒョードルとの一戦が流れ、ランデルマンに不覚を取って一歩退いた感じはあるが、やはりこの男の存在は捨て置けない。私がミルコが好きなのは、この男はPRIDEというリングで唯一順応という行為に背を向けているからだと思う。もちろん、PRIDEのリングにあわせた練習は積んでいるだろうが、彼はスタイルを変えない。それはリングだけでなく対戦相手によってもだ。あくまで立ち技。あくまでハイキック。そこが好きだ。己を武器を一身に磨いて、それで勝負する。なんでも出来る器用さはないけど、自分の領域では誰にも負けない。そこに憧れる。
PRIDEヘビー級は今後しばらくこの四人でドラマが作られることになるだろう。ヒョードルハリトーノフだって見たいし、流れに流れているヒョードル対ミルコだって見たくて仕方がない。当分楽しめそうなカードばかり。10.28は思いきってミルコ対ハリトーノフなんてどうですかね。痺れまくりですよ。