『ドラッグストア・ガール』(2003 日本)(ASIN:B00016ZLIY)

監督:本木克英、脚本:宮藤官九郎、出演:田中麗奈柄本明伊武雅刀三宅裕司六平直政徳井優余貴美子荒川良々杉浦直樹三田佳子
何で今更この映画を見ているのかというと、自分自身に「田中麗奈映画は全て見ること」という義務を課していたことを思い出していたからである。『きょうのできごと』も見なくちゃ。で、見てみたわけだけど、すさまじいバカ映画でしたわ。
脚本が一応クドカンということになっているが、これ、クドカンが脚本じゃなかったら多分ボツになるね。それくらい中身は薄いし、バカな話だし、展開もくだらない。
だが、だからといってどうしようもなくつまらないか、というとそうでもない。まず、この映画の企画自体が「クドカン田中麗奈のファンだった」ということから始まっているので、この映画全体が「田中麗奈マンセー」な映画であるということ。これはファンにとってはたまらない。ストーリーもそのまんまで田中麗奈の虜になった還暦間近の親父軍団が、彼女とお近づきになりたいためだけにラクロスをはじめる。ただ、それだけ。あとは、それにまつわるドタバタを描くのみ。なんだけど、なっちゃん(以下田中麗奈のことをなっちゃんと書きます)はとにかくカワイイよ。ありえないほどのミニスカートか履いちゃって、もう溜まりません。キャラ自体が多少小悪魔がかっているせいもあって、映画のの親父たち同様、こっちも鼻の下がひたすら延びまくりです。
ただまあ、可愛く撮れてるとは思うんだけど、監督の手腕があればもっと可愛く小悪魔っぽく撮れたと思う。あくまでもファンにとってはたまらないなっちゃんではありますが、それ以外の人にとってどれだけの魅力を発揮しているのかは微妙。劇中で柄本明が言うように「酸いも甘いも噛み分けた」大の大人たちがメロメロになっていくだけの説得力があるのか、というと正直物足りないんじゃないだろうか。マレーネ・ディートリッヒの『嘆きの天使*1レベルまでといったら酷ですが、もう少し何とかなったんではないかと思う。この監督はクドカンの意図もよく汲めてなかったと思います。
じゃあ、なっちゃんの魅力だけで終わる映画なのか、と言われるとこれまたそうでもない。出演者一覧を見ていただけばわかるように、何でこんな映画に?と思うほどの曲者ぞろいの俳優陣が揃ってるんですよ。特になっちゃんにメロメロになってしまう5人の親父たち、柄本、伊武、三宅、六平、徳井という面々が繰り広げるドタバタはあまりにも豪華。ハッキリいって脚本的にも演出的にもたいしたことないんですが、それでもこの5人が集まって、それもいい歳してここまでやるかってくらい体張ってくれれば、そりゃ面白いのも当然なんです。おまけにさらにその周りで荒川良々(初めてまともな青年役を見た)や余貴美子(この人は凄いね)までが笑いを取りに行くし、特別出演とはいえ杉浦直樹三田佳子まで担ぎ出しちゃう。どこを取っても俳優陣には文句ないわけよ。イメージ的には松竹とか東映のお正月映画の二本立ての裏の方、ってイメージ。俳優さんたちの楽しい姿をご覧くださいってやつね。
そんなわけでグダグダな内容の割にはそこそこ楽しめてしまいました。開始五分で「こりゃあ駄目そうだな」と思ったものの、親父たちが現れてからは飽きずに見れます。深く考えたりしなければ。なっちゃんの可愛さと親父たちのバカっぷりを楽しむためだけの映画です。
それにしてもビデオ撮りなのはわかるけど、露骨にそれが出ちゃってるシーンがいくつもあって、監督はもう少しライティングに気を遣えよ、と思ってしまった。

*1:1930年のアメリカ映画。真面目な高校教師がディートリッヒ演じるキャバレーの踊り子に夢中になり、身を持ち崩してのたれ死んでいくという話。名作です。