『探偵事務所5』(ASIN:B000E42P8W)

http://www.tantei5.com/movie/index.html
監督:林海象、出演:成宮寛貴宮迫博之貫地谷しほり池内博之永瀬正敏佐野史郎宍戸錠
『夢見るように眠りたい』でデビューしてから一貫して「探偵」を描き続けてきた林海象が、『濱マイク』シリーズ以来久々に手掛けた探偵映画。元々はネットでえスタートして、現在も設定をそのまま活かしてネット配信されている。
川崎にある「探偵事務所5」は60年の伝統を持つ由緒正しき探偵事務所だ。ここに所属する探偵は名前ではなく、「5」が先頭につく三桁のナンバーで呼ばれている。
探偵学校を卒業して晴れて「探偵事務所5」に配属された591は、所長である500(宍戸錠)の孫である瞳から「行方不明になった友達を探して欲しい」と依頼される。調査の結果、彼女は「カイン美容外科」という病院で美容整形手術を受け、生まれ変わったらしい。591は病院を探るうちに、恐ろしい真実に近づいていく。
一方、浮気調査が専門の探偵522は身内が「カイン美容外科」のせいで植物人間となっており、個人的に調査を進めていた。
映画として公開されたこの二本では、成宮寛貴演じる591と宮迫博之演じる522の事件が別々に描かれているが、522の話では591が絡んでくる。
探偵事務所5」という設定自体が興味深く、林海象によれば、これまで彼が製作した探偵の全てがこの「探偵事務所5」に関わる探偵だということだ。『夢見るように眠りたい』の魚塚(佐野史郎)は、本作の501の祖父という設定だし、永瀬正敏演じる濱マイクもまた「5」のナンバーを持っているらしい。といいつつ永瀬正敏は本作でも出演しているのだが(濱マイク役ではない)。そして所長の500は宍戸錠、いうまでなくエースのジョーである。
とはいえ、その設定と、林海象らしいモノトーンフィルム調の映像は楽しめるものの、ストーリーは特に目新しさがあるわけでもなく、まさにテレビ的。かといって『濱マイク』シリーズほどアバンギャルドでもない。そういう意味では見るべき点は少ないのだが、ネット配信されているアナザーストーリーも含めて「探偵事務所5サーガ」として楽しむのがこの物語の楽しみ方だと思う。なんつーか、こうかつてのアメリカドラマを見るような楽しみ方ですな。
それにしても林海象は昔から俳優に対しては演技力とかをまったく求めないよなあ。特に女優。演技よりも「雰囲気」をとにかく求めている人だ。だからこそ『夢見るように眠りたい』はモノクロサイレントだったんだろうが。
林海象の映像が好きなら楽しめること間違いなし。『濱マイク』にハマった人(特にドラマの場合)は、自分が好きな回の演出家を確かめてからの方がいいかもしれません。