週末のスポーツ雑感

サッカーは熱海で散々談義してきたのであまり言うことはないんだけど、U-17のアジア選手権で日本が優勝したんだが、この試合の得点シーンがとにかく素晴らしかった。大会MVPにも選ばれた柿谷の1点目のゴールはビックリするくらい凄かったし、その後の3得点全てがゴール前での混戦を個人の技術と勇気で見事に打開したゴールだった。これは彼らがスゴイのか、それとも日本でも17歳くらいまではああいうシュートが打てるのに、それから徐々にスポイルされていって「得点力不足」というよりもゴール前での感覚が失われていってしまうのだろうか、ということを考えた。どちらにしろ、彼らのあの感覚が今後も失われていかずに育ってくれることを祈りたい。Jや海外でプレーする全ての日本人選手を合わせても滅多に見れない素晴らしいゴールでした。
で、柔道ワールドカップ。あまりの情けなさに怒りを通り越して呆れた。それにはいくつか原因がある。
もちろん、試合内容が悪い上にメダルすら獲れずに終わった、という結果が一番の原因だけど、その結果を招いたのが、日本代表のコーチ陣も含めた「戦術」の杜撰さがあまりにも目立ったから。
初日の女子でフランス相手に敗北して、「世界一の柔道人口」と「ホーム」という二つの利点を活かしきったフランスの怖さは知っていたはず。それなのにメンバー表を見たときに思ったのは「全試合で勝ちにいってない」ということだった。まあ、そもそも現時点で野村にチームキャプテンと先鋒という重要な役を与えるメリットがよくわからない。実績でいえば当たり前だがダントツで、年齢的にもベテランなのは確かだが、一年のブランクがあって、復帰後は国際試合としてはチェコ国際で勝っただけ。しかもこの大会もベストではなかった。シドニーからアテネの時も二年のブランクがあり、復帰後一年はやはり本調子ではなかった。あくまでも野村の目標はオリンピックだし、彼だけでなく周囲も四連覇という大偉業を成し遂げることが彼のゴールだと思っているはず。その野村に対して団体戦のメンバーとしてワールドカップ出場を強いて、しかもキャプテン、先鋒という重圧を与えることが果たして正解なのか?。
で、実際フランス戦ではまったくいいところなく敗戦。ポイントすら獲れず。この影響なのか、それ以後も日本勢はいいところなくフランスに敗れる。途中、小野が明らかに大内刈りでポイントを獲ったのだが、無効にされる。だがこれもホームタウンディシジョンの範囲だ。そうでなくともシドニーの篠原がフランスのデュイエ相手に痛い目を見ているではないか。そうしたことも予想して勝負に挑むべき。結局五人目の泉まで勝利や一本どころかろくにポイントすら獲れぬままあっさりと敗退が決まった。特に泉はヒドイ。相手が組手を怖がり、引き手をとらせまいとして逃げるのに対し、やたらと審判に「逃げてるぞ」というアピールをする。真剣勝負の最中に審判にアピールするなど愚の骨頂だ。それで勝てるならまだしも、何も出来ず油断したところを相手に見事に一本取られた。結局出てきてしたことはアピールだけだ。なにしにきたんだか。
こうした惨状を目の当たりにして、コーチ陣は敗者復活の一回戦でメンバーを全員代えるという荒療治に出る。そしてその結果、相手がオセアニア選抜という弱い相手だとはいえ、7人オール一本勝ちという見事な結果を出す。緒戦の情けなさが嘘のようだ。と、ここまではよかった。
しかし次のブラジル戦では緒戦で敗れた小野と泉がメンバーに復帰する。実質勝っていた小野はともかくなぜ泉?。斎藤が怪我でもしたのか?。ブラジル戦には勝ったものの3-2という僅差。なぜ勢いをつけたメンバーをそのまま使わないのか。
この思いは三位決定戦のメンバー表を見てさらに強まる。先鋒に野村、次鋒に秋本の名があったのだ。緒戦でいいところなく敗れた(秋本の試合は中継されなかったので内容はわからないがポイントすら取れてない)二人をなぜここで?。江種は出場した二試合とも見事な秒殺劇を演じたし、内柴も問題なく勝っていたし、金メダリストだぜ。秋本に期待するのはわかるが、この場面じゃなくてもいいだろうよ。
結果として野村も秋本も引き分け。軽量級はなんとしても日本がとっておかねばならなかった。韓国は中量級は圧倒的に強い。そして予想通り中量級で勝負は決した。日本は大将の高井、棟田という二人が好調だっただけにもつれればわからなかったが、そこまで行くことができなかった。
確かに一本獲って勝つ柔道は美しいよ。ルールが改正されて日本が不利になったといいたい気持ちもわかるよ。だが、嘉納治五郎が柔道を「スポーツ」にして、世界へ発信した以上、柔道は日本だけのものではなくなった。しっかり組手とって華麗な立ち技で勝つだけが柔道だというのなら日本から出なければいい。世界で戦う以上は、それ以外のものも身に着けないと勝てない。そしてそれは選手だけでなくコーチ陣も同様だと思う。なぜ調子のいいメンバーを代えるのか。色んな意味で納得のいかない大会だった。
そして相変わらず日本以外の試合をまったく無視するフジテレビ。どこが優勝したのかすら殆どわからなかったよ(グルジアです)。頼むからもう中継権取るのやめてくれ。ホントに頼むよ。
そんな鬱々とした気持ちを振り払ってくれたのが、ボクシング世界スーパーフライ級暫定王座決定戦。元王者川嶋勝重とメキシコの新星ミハレスの試合。ボクサータイプのミハレスが意外にも1Rから打ち合いに望んだので、川嶋もミハレスも真っ向から殴りあう形で試合が進んだ。力の川嶋、スピードと正確性、そして連打のミハレス。二人の持ち味が存分に出て、2Rには川嶋がミハレスからダウンも獲った。しかしミハレスは立つ。この怒涛の殴り合いが12R続き、結果ミハレスが判定勝利。この試合結果は川嶋も納得だろう。負けて納得というわけではなく、自分のいい形を出し切れた試合だったと思う。ミハレスはあえて打ち合いに望んできた。これは王者になった後のことを考えてのことだと思うのだが、川嶋の重いパンチを何度受けても少しも怯みを見せないその「目」に決意を感じた。強くなると思う。どうせなら徳山ともやって欲しい。今度は高度な技術戦になるだろう。