『Number 570 ドイツを揺らせ。』

shaka2003-02-20


表紙がいい。高原は鈴井カメラマンがここにいることを知っていたんだろうか。
高原のブンデスリーガ初ゴールを受けての(Number的にはグッドタイミングだっただろう)ドイツサッカー特集。

私くらいの世代の人間ならば「海外のサッカー」といえば、それはすなわち「ブンデスリーガ」である。奥寺の影響もあってか、あの当時で海外のサッカーで報道されるものといえばブンデスリーガくらいのものだった。西ドイツ代表が全盛期だったせいもあるだろう。あの『キャプテン翼』でも若林が留学するのはドイツ(それも高原が移籍したハンブルガーSV)だ。

そんなブンデスリーガを愛する世代にとって嬉しい特集だが、ちょっと物足りない。そのことがすなわち、現在のドイツサッカーを如実にあらわしていると言えなくもない。2002年日韓共催W杯で準優勝したとはいえ、現在のドイツサッカーは輝いているとはいえない。活きがいいのはバイエルンただ1チーム(そのバイエルンにしたって今季のチャンピオンズリーグは1次リーグ敗退である)。昨年のチャンピオンズリーグ準優勝のレバークーゼンは二部降格が危ぶまれているほどだし、他のチームを見てみても、ドイツ人選手で目に付く選手は殆どいない。観客動員数こそ好調だが、それが「ドイツ人のサッカー」とイコールでないのが皮肉なところだ。
で、肝心の記事。

  • 高原直泰「38日間の苦闘」
    いや、ホントにいいタイミングでの初ゴールだったと思う。この記事にあつらえたかのよう。しかし、そのせいで報道過多だったから、この記事の目新しさはあまりない。再確認という感じ。とにかくアルゼンチン時代と違ってゴールを量産して欲しい。
  • スペシャル・インタビュー1 『ギュンター・ネッツァー 黄金の‘70年代を語ろう』
    タイトルからわかるように黄金時代の回顧。現役時代「賢人」と呼ばれたネッツァーは、あの時代と比較してドイツサッカーの未来を語る。決して楽観はしていないが、未来はある、と語っている。私はネッツァーの現役時代を殆ど知らない(彼はW杯では活躍の場がなかったから)。しかし、ドイツ人にしては珍しい彼の気質がドイツで珍重されたのはわかるような気がするインタビューだった。でも、「賢人」らしさを出すためだと思うけど、翻訳の口調はちょっとやりすぎ。
  • スペシャル・インタビュー2 『クリストフ・ダウム 失われた10年を乗り越えて』
    失われた10年」というのは‘96年欧州選手権に代表される‘90年代のドイツサッカーの低迷を表す。ダウムは、昨年のW杯ドイツ代表監督になるはずだったが「コカイン疑惑」で辞任に追い込まれた。その結果、監督資格を持たないルディ・フェラーが監督代行として指揮を執ったわけだ。どうやらその疑いは晴れたらしい。選手としてプロ経験のないダウムだけに、言ってることは理論的で実務派であることが窺い知れる内容。ただ、それだけにあまり面白味のないインタビュー。

ブンデスリーガ特集なら、ベッケンバウアーとかルンメニゲとかザマーとかマテウスとか、それこそフェラーのインタビューの方が面白かったとは思うが、彼らはこれまで何度かNumberのインタビューに答えているからなあ。あえて違う路線で攻めてみたんでしょうか。個人的にはブレーメとかのインタビューが聞きたい。あとはブッフバルトとかね。

  • アディダスかプーマか、それが問題だ
    私はこの対談のメンバー(金子達仁杉山茂樹中西哲生)よりも下の世代になるが、確かに当時のサッカー少年にとってアディダスかプーマか、というのは大きな話題だった。私の好きなセンスは殆どアディダス派だったのだが、初めて履いたスパイクはプーマだった。近所のお兄さんからのお下がりである。それでも嬉しくて、サイズが合わなくなってからも捨てられなかったなあ。それにしても時代が変わったなあ、と思う。当時はスポーツブランドのシャツとか着てたら「ダサい」の代名詞だったのに(中西哲生もそう回顧している)、今ではジャージで町中を歩いているのは当たり前。女性でもアディダスブランド着てたりする。あの頃じゃ考えられないよ。今思えばプレミアなものも結構持ってましたがさすがに捨ててしまいました。
  • 密着ドキュメント、福田正博『ラスト・ショット』
    タイトルから何からライターが勘違いしすぎ。なにを詩的な雰囲気を醸し出そうとしてるのか。全然伝わってこないよ!。俺は生の福田の声を、感情を聞きたいんだよ!。この枠はいつものようにインタビューにして欲しかった。福田を愛する一人のファンとして哀しい。

ま、総体的に物足りないのは仕方がない。なんてったって現役のリーガの選手のインタビューすらないし。でもあれだね、『Number』がやる紀行ものはいいね。普段見ることが出来ない町や人の風景が見えるから。

できればマーティン・ヘーゲレには2ページじゃなくもう少し書いて欲しかった。直接の記事じゃなくても何かの記事を編集するとか。まあ、他紙に連載持ってる人間としてはアレが精一杯だったのかもしれないが。

2006年ドイツW杯の公式ビールがバドワイザーに決まってるらしくて、ドイツ全土で反対運動が起こってるらしい。頑張れドイツビール(私は酒を飲みませんが)。