蹴球微熱 EURO2004 決勝戦

「虚仮の一念、岩をも通す」と言いますが(いや、虚仮は言い過ぎだろう)、今大会のギリシャはまさしくそんな感じでした。お見事としか言い様がない。ただ、ギリシャの素晴らしさはマンツーマン・ディフェンスや走り回る体力だけでなく、「たった一度」のチャンスをも逃さないその力にあると思います。実際は一度ではないけど、おそらく彼らにとっては「これが最初で最後のチャンス」と毎回思ってるんではないだろうか。それがあの得点力、正しくは得点率に現れているような気がします。戦術云々ではなく、このチームを作り上げたレーハーゲルと選手たちには惜しみない拍手を贈りたい。
対してポルトガル。敗因は、なかったといっていいのではないだろうか。どんな大会でも決勝戦になれば敗因とか関係ないですよ。どっちがいいサッカーしたか、それだけです。そして、今回は勝利したギリシャがいいサッカーをしたということだと思います。
それでも粗を探すとすれば、スコラーリが最後まで信じて使い続けたパウレタが爆発しなかったことが挙げられるでしょうか。開幕戦で敗北を喫したスコラーリは、第二戦から大きくチームを変革しました。具体的には黄金世代と呼ばれた選手達を大胆に入れ替えたことです。それはチームの柱ともいえるルイ・コスタフェルナンド・コウト、遂にはフィーゴまでをスタメンから外すという采配でした。フィーゴは再びスタメンに返り咲きましたけど。黄金世代だけでなくこれまでスタメン確定だったメンバーも殆ど総入替え。開幕戦と決勝戦でスタメンだったメンバーは、GKのリカルド、DFのアンドラーデ、MFのフィーゴ、FWのパウレタの四人だけです。大会中にここまでチームを弄くって決勝まで行ったんだから驚きだけど。そうした中でも結果の出続けなかったパウレタスコラーリは使い続けました。「いつかパウレタポルトガルを救う点を獲ってくれる」と信じてのことだったと思いますが、結果としてはこれが残念な結果となったということかな。
ついでにいうとデコ。確かに彼は巧い。それだけに日本代表の10番とやたらダブります。巧いけど持ち過ぎ(日本の10番ほどじゃないが)だし、決勝での二度のフリーキックもいずれも直接狙い。一度目は仕方がないとしても二度目はいくらなんでも直接はないだろ。しかもゴールにかすりもしなかったし。ああいうキックは味方の士気を大いに下げると思う。自己中心的なプレーがソックリ。そんなことを考えながら見てました。
さて、表層的な感想で締め括るとすれば、「テクニシャンの個の集まり」は、「凡人たちの戦術とチームプレー」に敗れた、ということになると思います(本気でそう思っているわけではないが)。とはいえ、ギリシャの起こした波乱は決して奇跡ではありません。些かできすぎだとはいえ、レーハーゲルにしてみればある程度の勝算はあったはずです。そんな結果を見て私が思うのは、どこかの代表監督がこの結果をどう見たのかということ。「黄金の中盤」とかいう海外でプレーしているというだけの選手たちを優遇し、ろくな戦術も必勝パターンもないチームがワールドカップという舞台で通用するのか。どう思ってるのかそこんとこを知りたい。