蹴球微熱 U-23 日本VSオーストラリア

個人的には勝ち負けはあまり気にしていない。それよりも強化試合の目的が本来のものとは別になってしまったところが残念というか注目点であった。それはずばり怪我で離脱した今野の代役、または中盤の構成をどうするのか、ということだ。
このチームにおける今野の役割はあまりにも大きい。遅れてきた存在だったはずで、しかも一世代下の選手だというのに、今となっては今野なしのこのチームは考えられない。監督の信頼も、おそらくはチームの信頼も絶大だ。それが最も色濃く出たのがメンバー選考における鈴木啓太の落選である。オリンピック予選ではキャプテンまで任されたボランチ鈴木啓太の落選は、もちろん山本監督のいう「ユーティリティプレイヤーの優先」にそぐわなかったこともあるが、それ以上に「ボランチの一人は今野」という絶対的な決まりごとがあったからである。DFの選手を別にするとポジションとスタメンが確実なのは今野だけといってもいい。それくらい重要な選手である。
そうした「今野の代役」テストとしては阿部、菊池の二人は及第点だったと思う。しかし逆に、当初の目的であったアテネ本番に近いメンバーでのシミュレーション、という点ではあまり役に立たない結果になってしまったのも事実だ。
「今野の代役」テストが急務なのは事実だが、その結果中盤での選手起用がそれだけを意識したものになってしまった。つまりアテネ本番で合流する小野伸二という切り札を投入した時の図式があるで見えなかったということである。今野の怪我がなければ、今野、阿部のダブルボランチにサイドに駒野と森崎、トップ下に松井を入れるか3トップにして阿部の代わりに小野を使う、という選択肢があるわけだが、それに関するテストがまったく出来なかった。阿部、菊池、森崎、駒野、徳永という5人の中盤ではハッキリいって攻撃力が見劣り過ぎる。確かに点を獲れなかったFWにも責任はあるが、あの中盤ではオーストラリアの硬いディフェンスを崩すのは難しいだろう。まるで守備固めのような布陣である。山本監督も本番のイタリア戦、パラグアイ戦を見越しての守備意識だったのかもしれないが、「今野の代役」に気をとられるあまり本番ではあまり役に立たないシミュレーションになってしまったような気がしてならない。
結果的に奮起したのはDFである。闘莉王の笑っちゃうほどのオーバーラップの多さは、中盤での仕掛けができないことによる苛立ちからだと思うし、那須が珍しく何度もサイドを駆け上がったのもそのせいだろう。確かに堅い守備を打ち破るには後からの押し上げとサイド攻撃は基本である。しかし押し上げにおいてもサイド攻撃においても中盤のタメはやはり必要だし、サイドに振る、後からの飛び出しにスルーパスを出すといった選手がいない。オーストラリア(または本番のイタリアやパラグアイ)のような長身でガタイのいい選手をDFに揃えるチーム相手に、高松や平山に孤独なポストプレイをさせても無理がある。後ろ向きでもボールを落として、それを受ける中盤の選手さえいれば攻撃の幅ももっと広がるのに。まあ、それを期待しての小野伸二なんだろうが。
と、心配はつきないが、GKに黒河を起用したことからも山本監督の意識がテストにあったことは間違いない試合で、結果を深刻に受け止める必要はあまりないと思う。それ以上にやはりこのチームは面白いし。アジアカップA代表の試合見てても寝ちゃうけど(マジで)、このチームは眠くならないからなあ。今思うことは山本監督と同じで「今野は果たして間に合うのか」ということですね。個人的には今野がダメだったらそれを言い訳にしてもいいと思うくらいの選手だし。