アテネオリンピック 柔道 三日目

まあ、冷静に考えて三日目と四日目が日本柔道にとって一番厳しい日にはなるだろうと思っていた。それでも日下部基栄には期待していたんだが。
まず男子73キロ級だが、この階級は中村兼三の後継者が出てこないまま国際大会ではメダルから遠ざかっていた。そんな中で高松は今年のフランス国際で優勝し期待されていたが、国際経験の少なさが裏目に出たかなあ。昨年の世界柔道にも出てないし。敗者復活までまわれれば幾分身体もほぐれたかもしれないんだけどねね。運がなかった。まだ22歳、今後に期待しましょう。
とはいえ個人的にはこの階級の注目はなんといっても韓国のイ・ウォンヒ。この選手は凄いよ。昨年の世界柔道で初めて知ってから一目惚れ。まだまだ粗い柔道をするんだけど「モノが違う」。これで年齢とともに安定感が伴ったら無敵だと思う。特にこの日も見せた左変型の体落としは絶品。「つくり」が物凄く巧い。相手の袖を切るかのように身体を回転させ、相手がそれに合わせて出てきたところをすかさず投げる。その瞬間まで釣手を持ってないので相手は予測が出来ない。日本人以外でここまで完璧に相手を投げる選手は今では殆ど見当たりません。決勝での相手はロシアのマカロフ。これも私が予想した顔合わせだったんだけど、マカロフが思った以上に衰えていた。かつての豪快な内股はなかなか決まらなかったが組手の強さは相変わらず。ロシア人にしては彼はしっかりと組んで投げてくるので個人的には好きな選手です。しかし、やはり日の出の勢いのイ・ウォンヒと衰えの見えはじめたマカロフという構図では勝つのは明らかにイ・ウォンヒで、その通りの結果となりました。正直いってこの日の柔道は全体的に非常に低レベルだった。日本人が早々に消えたせいもあるけど、しっかり組んで投げる、かつぐ、といった柔道は殆どなく、ポイントに終始した退屈極まりない試合ばかりだった。そんな中でのイ・ウォンヒとマカロフの勝負は唯一ともいっていいくらい素晴らしい試合で見応えがあった。残念だけどマカロフはこれが最後のオリンピックかなあ。と思うと同時にイ・ウォンヒを見るにつけ、当分の間この階級では日本は厳しい戦いを強いられそうだと改めて思いました。
さて女子57キロ級。シドニーで本人もビックリの銅メダルとなった日下部基栄ですが、今大会はやはり左膝の怪我の影響が大きかった。特にフェルナンデス戦では軸足が利かないせいで思いきって技に入って行けなかった。相手がこの日の最悪柔道選手賞を与えたいフェルナンデスだったせいもあるが(戦い方自体が反則だ)、正直見ていて痛々しかった。山口香コーチの表情も厳しかったなあ。ただ、悔しくってたまらないだろうし、涙にくれながらもインタビューにちゃんと答えたことに感動。まだ25歳、次があるさ。
さて四日目の今日も日本勢にとっては厳しい一日。男子81キロ級は完全なる混戦状態なので塘内にもチャンスはある。しかし逆にいえば早々に敗退の可能性もある。女子63キロ級も厳しいだろう。おそらく山は三回戦。とはいえ順当な予想はキューバ、中国、韓国あたりかなあ。