アテネオリンピック 柔道 五日目、六日目

井上康生が負けた。ちょっと信じられない。消極的姿勢で反則を取られて後がなくなったところで焦って技に行ったところを返された。それは理解できる。だが、負けるというのは、うーん。井上康生の柔道が今の柔道の観点から消極的に見えるのは今に始まったことではない。彼は常に一本を狙い、ポイントのための技をかけないからそうなる。これまでなら、反則を取られても焦ったりすることはなかったと思うんだが。ルールの問題もあるんだろうけど、とにかく信じられないの一言だ。敗者復活戦で負けたことについては、彼の場合金メダルが獲れないとなった時点でモチベーションは下がっているだろうから仕方がないと思う。私自身、メダルにすがって闘う井上康生など見たくはないし。ただ、対戦相手全てを一本で倒す、という彼の姿勢からすると残念な気もするが。
阿武はやっと、本当にやっとの金メダル。今大会で一番金メダルを獲って欲しかった選手だから素直に嬉しい。世界選手権を四連覇というのは谷(田村)亮子を抜かせば前人未到の偉業であるのに、なぜかオリンピックでは勝てなかった。そう、メダル云々ではなく文字通り勝てなかったのだ。アトランタシドニーと共に一回戦負け。三度目の正直に期する思いは相当だったと思う。おめでとう。これで名実共に世界一だ。一人で日本女子重量級の看板を支え続けたことといい、彼女はもっともっと認められていいと思う。
そして昨日の女子70キロ級の上野雅恵は見事だった。まあ、優勝するとは思っていたけど彼女のテクニックは予想以上に凄かった。決勝戦でオランダのボスを仕留めた袖釣り込み腰、釣手の処理も見事だったがそれ以上に相手の右腕の固め方、これはもう超一流。スローで引き手を取った左手と右手で相手の右腕を押さえ込んで投げるという技術を見たときは溜息が出ましたよ。これが世界チャンピオンの技術ですなあ。少なくともこのあたりの階級でこんな技術を持っている選手は上野以外にいないと思う。凄すぎ。
男子90キロ級の泉は残念だったが、ちょっと技を受けすぎ。投げられない自信があったのかもしれないけど外国人選手のパワーをなめたらアカンし、やっぱ技は受け切ってナンボだからね。ただまあ22歳だし、楽しみではあります。
明日の男子100キロ超級には鈴木桂治が登場。井上康生を破った、ということで注目されてますが、実力的にも凄いっす。何よりこの階級で足技で一本取れるってのが凄い。体重での不利は否めませんが、逆にこの階級の選手は足元が弱いのでチャンスでもある。鈴木の場合、引き手か釣手だけでもタイミングで技を出せる強みもある。なにより井上康生の分まで気合が入ってるだろう。期待したい。
女子78キロ超級の塚田は正直厳しいと思う。なんせ海外の選手は高くてデカイ。体格的に圧倒的に不利だ。特に中国の孫福明は124キロもある。あとは塚田のわざとスピード次第。