本にまつわるエトセトラ

今月の読売ADレポートojoの特集は「本は変わろうとしているか」。確か昨年のこの時期に似たような特集が組まれた記憶がある。毎回この手の特集は興味深く読ませてもらっている。
まだ全部は読んでいないが、「今月のデータ」で「本はどう読まれてるか」という意識調査がされている。これと、永江朗のインタビューを読む限り、「活字離れ」「本離れ」というイメージはある程度は見られるにしろ、実際は風評に近い、出版流通側の言い訳であることを再認識する。ただし、データに寄ればここ数年での一人あたりの読書数は変わっていないということは、ブックオフや図書館などが出版流通業界に与えている影響は小さくないといえるのかもしれない。
要するに「パイは減っていない」が「競合他社が増えたため売り上げが減っている」という状態に近いのではないか。まあ、実際にはブックオフや図書館は異業種になるわけだが、わかりやすく考えればそういうことだろう。
これをさらにわかりやすく考えれると、「では競合他社に勝つためにはどうする?」という論理になる。もっとも単純な結論は「ライバルよりもいい品をより安く」ってことだろう。しかし、無料である図書館は言うまでもなく、ブックオフに対しても価格で勝負することは無謀である。さらに、結果的には「品」として流れていくものは同じものだから「いい品を」というのも難しい。その意味では確かに出版流通業界にとって、ブックオフや図書館は敵なのかもしれない。だからこそ、出版流通側は「ブックオフや図書館は金払え」というのだろう。そして、そこからの利益を吸い上げることで、少しでも自分達の補填にしたい。その気持ちは理解は出来る。
だがこれはあくまでも「消費者」という名の「読者」の立場を軽んじた話のように思える。消費者は確かに同じものなら安いものに惹かれるだろう(厳密には同じものではないが)。だが、現在は「図書館=無料」、「ブックオフ=半額または100円」、「書店=定価」という3つの図式しか成り立っていないわけで、「本を読む」ことだけでなく「本を所有する」というレベルで考えれば「定価、または半額か100円」という選択肢しかないのである。
安いものが売れる、ということはわかっていながら、自らがそれを実行することなく、他人が売ったものを吸い上げよう、という考えは、出版流通側がブックオフや図書館に対して「人の褌で相撲をとるな」という言い方と私には五十歩百歩に思える。
上記の内容は、あくまでも極視的にある方向から物事を見た場合の話なので、これが全てとは思わない。むしろ恣意的な見方であることも認めよう。しかし毎度毎度思うのは、世界の中心で「本を読む人が少なくなった」とか「図書館とブックオフのせいだ」と叫ぶばかりで、自分達の行動や体制を省みない出版流通側にイライラするのだ。「娯楽が増えたから読書する人口が減った」とか言うんなら、それに相応しい対応をしろ。周りに原因を求めても解決にはなりません。
ojoの話から随分ズレたが、「増刊・知ったかぶり週報」とか読んだもんだから余計に考えてしまったよ。まあ、既得権益が大事なのは出版流通業界だけじゃないけどね。ただ、この業界のやり方は実質的には談合みたいなもんだ。法律で守られているからといって自由競争を失くしたら、勝負する力も育たない。そういうこと。