『狐闇』北森鴻(ISBN:4062750813)

旗師・冬狐堂こと宇佐美陶子シリーズの長編第二弾。今回は、陶子が市で手に入れた一枚の青銅鏡が謎を呼ぶ。
当然ながらこの青銅鏡に隠された謎を読み解くのがメインなわけだが、なんといっても今回の読みどころは、『凶笑面』の蓮杖那智、『孔雀狂想曲』の雅蘭堂こと越名が陶子とチームを組んで謎を解くという点にある。
これまでも他の北森鴻作品で、他シリーズの登場人物がチョイ役で登場したことはあるが、今回の那智と雅蘭堂はまるで本シリーズの重要人物のような役割である。ちなみに香菜里屋のマスターもこっちはチョイ役だが登場します。まさに北森鴻クロニクル。
メンバー勢揃いということもあって、謎もそれに対抗するかのように大きなものだが、正直大きすぎてというか陰謀がかりすぎてピンとこなかったというのが本音。個人的に陶子シリーズには旗師や贋作者、目利きが入り乱れての丁々発止の騙し合い、というのを期待していたので、その意味でも残念。それでも当然そのあたりが物語の切り札にはなってくるんですがね。
女性を主人公としてのハードボイルド、という点ではますます磨きがかかっていて、その点からすると読み応えはかなりある。しかし同時に今後の陶子がどうなるのか不安にもなる、そんな感じです。