• 『月館の殺人(上)』綾辻行人佐々木倫子ISBN:4091885810
    まーこの企画を考えて実現させた編集者は凄いわな。物語としては、幼い頃に父親を失った高校生・空海(そらみ)が病気で母親も亡くなり天涯孤独になる。そこへ一人の弁護士が現れ、空海には北海道に祖父がおり、空海に会いたいので北海道に来て欲しいと告げられる。こうして空海は北海道へと向かうのだが、そこに待っていたのは寝台特急幻夜」。母親が大の鉄道嫌いだった為にこれまで一度も鉄道に乗ったことがない空海だったが、6人の男性と共に幻夜での旅を共にすることになる。
    しかしこれは全国の鉄道ヲタクを完全に敵に回しているとしか思えん。とにかく鉄道ヲタクだらけの話で、しかもろくな人間がいない。もともと空海の父親が亡くなった(これはミスディレクションの可能性あり)事件自体が鉄オタ絡んでるし。大丈夫かね。
    オリエント急行の車輌を使った寝台特急幻夜」。コンパートメントでの密室殺人、とまさしく列車ミステリの王道ですが、この上巻の最後では謎の館が現れるので、下巻では綾辻行人お得意の館ものになるんではないでしょうか。それにしても殺人が起こったり、根底にはドロドロしたものがありそうな話なのに佐々木倫子の手にかかると全部コメディになってしまう。ギャグな話をシリアスめいた手法で描く、というのを得意とする佐々木倫子ですから、こうなるのもわかるきがするんですけどね。不思議なマンガだ。