『女王様と私』歌野晶午(ISBN:4048736280)

「で?」
これが読み終わった時の私の素直な感想。「だからなんなの?」と言い換えても良い。別になにが言いたいの、とかそういうことじゃないんだけど、とにかく「で?」という気分になるのだ。
面白くないとは思わないけど、別に読まなくてもいいかも。じゃあなぜ読んだかっていうと、話題についていきたいからなんですけど。なんか『葉桜〜』の時も思ったんだけど、この人はエンタテイメントというのとは別の意味で読者を転がすよね。私にはそれが浅薄な行為ととれて、ある種の手抜きのようにも感じられてしまう。なんていうのかなあ「こういうのが好きなんだろ?」みたいな空気が(序盤の叙述とかはそれ以外の意味ないし)。それでもある程度は読ませる技量の持ち主だから、嫌な気持ちを感じつつも読めちゃうんだけど、読み手としては結果的に不満が残るんだよなあ。もしくは何も残らないか。
話題性とか、最近の時流に敏なのは認めるけど、それらを突っ込んだだけの話の面白さは、決して小説としての面白さではないと思いますですよ。作者自身の中で消化した上で出して欲しいな。だからたぶん「で?」といいたくなるんだと思う。
つまらなくはないんで(読んでいる間は没頭できると思う)、暇潰しの一冊としてオススメしないこともないけど、これを読む時間があったら他の本読んだほうがいいかもしれない、とも思う一冊。私のように話題についていきたい人にはオススメ。たぶん、それ以外の価値はあまりない、かな。まあ、話題性があるってことはそれだけでも結構なことですが。「今年最大の問題作」らしいですし。その意味では読んでおいてよかった。
以下ややネタバレ気味な放言なんで反転。
っていうか個人的には絵夢については「なんでもアリ」ってことでスルーなんですかね。いや、巨大化じゃなくて思考能力についてなんだけど。妄想の世界では確かに自分が神だとは思うけど、自分の能力以上の思考とかは出来ないと思うけどね。まあ、作者にとってはそんなのどうでもいいことなんでしょうな。
余談ですが、例の『世界の中心で〜』以来、著名な作品タイトルをもじる作品が増えてきた気がしています。それが読者の目を引くのかどうかわかりませんが、個人的には少しはネタ元を想起させるような内容にして欲しいと思う。タイトルも創作物の一部ですよ。