K-1GP 2005 決勝

ここのところどうも不満ばかりが残るK-1だったが、今年のGPはどうなのか。結果よりも興行としての出来が気になってしまいつつ見た。
レミー・ボンヤスキーVSチェ・ホンマン
飛ぶ鳥を落とす勢い、という設定のホンマンだが、実際はトップファイターとの対戦はない。ここで真価が問われる、とはいうが事前の予想通りローの連打で終わりだろう、と思っていた。しかし、なんかレミーの攻撃が散漫。手数も少ないし、無理にパンチ、ハイキック狙いが目立つ。2ラウンドからローが増え、ホンマンがぐらつき始めるものの、それでも手緩い。なんかレミーの集中力がない感じ。結果判定までもつれ込む。非常に煮え切らない一戦で始まってしまった。
ジェロム・レ・バンナVSピーター・アーツ
このカードが準々決勝とはもったいない。ベテランとして世代交代が取沙汰される二人だが、今年は調子がいい。この試合のパフォーマンスも4試合の中では最高級だった。一進一退の攻防。甲乙付けがたし。とにかくアグレッシブなので面白い。それでいて互いに一発は防いでる。3ラウンドで決着つかず延長戦へ。ここでバンナがスタミナ切れ。アーツは今までスタミナ切れを見たことがない。ナチュラルに近いウェイトでやってるからだろうか。ダウンは取れなかったがバンナをぐらつかせ、辛くも判定勝利。しかし、二人のうち一人が消えるのはもったいない。
武蔵VSルスラン・カラエフ
カラエフの動きがいい。このクラスとは思えないスピード。武蔵はいつもながら待ちの姿勢。ダウンさえ取られなければ絶対判定では負けないというホームタウンディシジョンの申し子だから出来る戦法。だからつまらない。結局その通りカウンターばかり狙ってチンタラ試合したにもかかわらず(たぶんカラエフの方が手数は4倍くらいあった)、3ラウンドで決着つかず延長戦。カラエフはさすがにスタミナが切れかかってはいたが、それでも手数は減らず。しかし、やはり判定では無敵の武蔵が勝ちましたとさ。ハイ、よかったね。
レイ・セフォーVSセーム・シュルト
1ラウンドカット。で、2ラウンドからなんだけど、いきなりアップのセフォーがヘロヘロ。「もうスタミナ切れ?」と思ったら、シュルトの圧倒的な圧力に押されて滅多打ちだった。さすがにタフさを誇るセフォーだから耐えてたけど、スタンディングダウンまで取られてた。リーチの短いセフォーのパンチが届かないのが辛い。なんとか判定まで持ち込むものの、シュルト圧勝。この時点で、空気が作られはじめた。
で、準決勝に進むところでアーツが肋骨骨折で先に進めぬという報告が。まあ、あれだけの試合だったからなあ。だからあの二人を準々決勝で戦わすなんてもったいないと言ったろうが。
で、リザーバーとして勝ちあがってきたのはグラウベ・フェイトーザ。ここで一瞬、「またも武蔵救済制度か」と思ったのは正直な気持ち。で、先に。
セーム・シュルトVSレミー・ボンヤスキー
前に闘った時はレミーは何も出来ずに終わったが、チャンピオンとしてリベンジなるか、という試合だったのだけれど、またも何も出来ず。シュルトの良さは大きさを活かして連打で前に出て相手をロープ際、またはコーナーまで詰めて、距離詰めて膝蹴り、というパターンを持っていること。そして、愚直なまでにそれを繰り返すこと。結局このパターンにレミーもはまって1R2分でKO。今日のGP(放送分)で初のノックダウン。倒れた後のレミーの呆然とした表情が印象的。王者としての誇りが崩れた一瞬だったのだろう。反対にシュルトはその強さを見せつけた。チャンピオンに圧勝しての決勝進出。もう誰もが「こいつは強い」と思ったことだろう。
武蔵VSグラウベ・フェイトーザ
極真からK-1へとスタイルを変えることに成功し始めたグラウベ。そうはいってもまだトップファイターとの差はある。と思っていたので、またも判定で武蔵が勝ちあがるかと思っていたんだけれど、意外な結果に。1Rこそ、いつものダラダラ展開だったが、終了間際に去年の決勝とまったく同じ展開でグラウベのパンチに武蔵がフラッシュダウン。ダウン取られたらさすがに判定勝利は難しい。2Rは武蔵が前に出るかと思いきや、グラウベがパンチで前に出始める。前の試合でスタミナを失った武蔵は下がるだけ。そしてその下がり際をグラウベジャンピングニーが一閃。これ以上は綺麗に決まらないというくらいの決まり方で武蔵ダウン。相変わらずグラウベは体が柔らかいなあ。あそこまで膝が伸びるとは。というわけで、武蔵流血ダウンという気持ちのいい結果でグラウベ決勝へ。
空手家同士の決勝って始めて?。これでアンディ以来の空手家の優勝は確定。あとはどちらが勝つか。
セーム・シュルトVSグラウベ・フェイトーザ
二人とも準決勝を膝でKOしてきて、勢いはある。ただ、チャンピオンを下してあがってきたシュルトと、判定マンを下してきたグラウベでは勢いにも差はあるか。とか思ってる間もなくシュルトラッシュ、ラッシュ。そして止めの膝蹴り。グラウベ失神KO。壮絶。よけた方向に膝入ってカウンターになってる。ロープに首が引っ掛かった状態で倒れてるにもかかわらずカウント取り始めるレフェリーにはビックリ。早く助けろよ!。あの状態で血流が止まったらヤバイだろ!。そんなこともありつつ、シュルトがその強さを見せつけた。
K-1参戦後、無敗でチャンピオンまで上り詰めたのは第一回のシカティック以来だろう。ある意味ではホンマンなんか比べ物にならない怪物がそこにいたわけだ。まあ、シュルトの場合は、パンクラスでもチャンピオンになってるし、格闘通の間では長いこと最強説が流れてたわけだ。ただK-1サイドとしてはこれまで一度も表で使ったことはない選手だったので、今回の優勝は突然のように見えるかもしれない。しかし、昨年はシュルトK-1のリングに立っていて、勝ちまくっていたにも関わらず、GPへの参戦権をもらえなかった。それだけに今回の優勝はシュルトとしては嬉しいだろう。そして、今回の強さはシュルトに勝てる人間がいるのか?、というくらいの印象を植え付けた。実際、シュルトが愚直なまでにあのスタイルを貫き通せば、そう簡単に勝てる相手はいないだろう。私も現在のK-1では思い付かない。ちょっとだけマイティ・モーとかは面白い組み合わせになりそうだと思ってるけど。しばらくはシュルトの王座防衛が続きそうだ。