東野圭吾マイベスト10

政宗九さん(id:mmmichy)に触発されたので私も個人的に東野圭吾のベスト10を挙げてみることにする。直木賞を機会に東野圭吾の他の著作を読んでみようという人もいるだろうし、古い著作は意外に読まれていないようなので、私なりの直木賞受賞祝い。
ちなみに私の東野圭吾読破率は58作中、51作。未読は『ウィンクで乾杯』、『殺人現場は雲の上』、『怪しい人々』、『しのぶセンセにさよなら』、『サンタのおばさん』(絵本)、『ちゃれんじ?』(エッセイ、ただし付録で収録されている『おっさんスノーボーダー殺人事件』は読了)、『黒笑小説』(ただし一部読了)。楽しみのために取っておいた読み残しもあと僅かだなあ。
では、ベスト10を。ただし順不同。

  • 『秘密』(ISBN:4163179208
    私が東野圭吾にどハマリした原点。第一回MYSCONで、深夜に車座になって議論したのも懐かしい。どうも女性側の受けは悪いようですが私の中ではあまりにも素晴らしい一冊。カバーの装丁もよかった(なのでハードカバーにリンクしておきます。私は文庫版も持ってるけど)。広末涼子主演の映画は評判が悪いですが私は好きです。
  • 『眠りの森』(ISBN:4061851306
    『卒業』で初登場した加賀恭一郎シリーズの一作。バレエ団を舞台にした事件を加賀が解決するんですが、そのミステリ部分はさておいて、サイドストーリーとなる部分の余韻が素晴らしい。この後の加賀がどうなったのかメッチャ気になる。加賀恭一郎ものは特に時系列がないので、『卒業』さえ読んでしまえばあとはどれから手に取っても大丈夫です。
  • 『仮面山荘殺人事件』(ISBN: 4-06-185966-8)
    このタイトルの秀逸さ。そして舞台設定の見事さ。別ってしまう人はわかってしまうが(私もそうだった)、それでもやはり面白い。私の芝居熱に火をつけた作品。
  • 『ある閉ざされた雪の山荘で』(ISBN:4061859099
    これが東野圭吾流「吹雪の山荘」だ。通常ならありえない「吹雪の山荘」を作り上げる見事さ。そして反則スレスレのオチ。この臨場感溢れる「事件」にドキドキしないはずがない。
  • 『悪意』(ISBN:4062730170
    東野圭吾という作家の文章テクニックのひとつの臨界点がこれだと思う。メタだの叙述だのといったレベルでは語れない。いったい何が真実で何が嘘なのか。虚と実の酩酊。連城級の一品。
  • 『天使の耳』(ISBN:4062630168
    単行本では『交通警察の夜』というタイトルでした。交通事故をテーマにした短編集。様々な技巧が駆使された一冊。表題作【天使の耳】でのトリックの解明方法、【捨てないで】の東野圭吾らしい結末、【鏡の中で】の衝撃。どれをとっても一級品です。
  • パラレルワールド・ラブストーリー』(ISBN:4062637251
    これを選ぶのはちょっと度胸がいるんだけど、好きなんです。まずこのストーリーのモチーフになっている山手線と京浜東北線の思い出がある人にとっては必読。私がそうだってだけなんだけど。東野圭吾の作品でSFというかファンタジー的な要素を扱った作品はいくつかありますが、これは「恋愛と友情」というテーマも含めて好きな作品。
  • 『宿命』(ISBN:4061854445
    東野圭吾の「ドラマ性」が初めて表面化した作品じゃないかな。とにかく最後の一行という部分はあるんですが、ミステリとしてというよりもその味わいがとにかく心に残る一冊。
  • 『回廊亭殺人事件』(ISBN:4334719686
    えーと、これは大穴。オススメはしませんし、私も好きな作品というわけじゃないんですが、この強烈なパンチを忘れることができない。くれぐれも言いますが、良作ではありません。でも読んでみて欲しいなあ。
  • 容疑者Xの献身』(ISBN:4163238603
    まあ言うまでもなく。これか『秘密』が私の東野圭吾ベストのどちらかですね。

番外として、

  • 『怪笑小説』(ISBN:4087488462)所収の【あるジーサンに花束を】
    基本的におちゃらけた作品が収録されている『○笑小説』のシリーズなんですが、これだけはちょっと異質。タイトルからおわかりのように『アルジャーノンに花束を』のパロディです。これがとにかくいい。泣ける。本家よりも上の部分すらある。とにかく読んでみれ。

他にも原発を舞台にしたサスペンス『天空の蜂』とか、地味ながらいい味出してる『学生街の殺人』とか、最近でいえば『殺人の門』(ただし読後感は最悪)とか色々あるんですけど、まあとりあえず。とにかく作品の幅が広いし、作風まで変わるので代表例くらいに考えておいてください。
参考までに、5年前に私が書いた「東野圭吾作品について」という覚書にリンクしておきます。5年も前なので些か内容が古いですし、今となっては誤記になっている部分もあります。この5年間で私自身の東野圭吾観が変化している部分もあるんですが、まあ時間潰しにでも。