蹴球微熱 FIFAワールドカップ2006 ドイツVSイタリア

延長も残り2分。両チームとも頭にはPK戦があり、テレビに映るブッフォンの顔は心なしか青白く見えた。それはそうだろう、ワールドカップのジンクスのひとつに「イタリアはPKでは勝てない」というものがあるからだ。おそらくはデル・ピエロの投入もPK戦を見越しての采配だったのではないだろうか(リッピのインタビューを読むと違うみたいだが、本当かどうかは別だろう)。正直にいえば、デル・ピエロが投入された時点で「これは勝てるかもしれない」と思った。正しくは「PK戦まで行くかもしれない」ということだが。後はジンクスがものを言うだろうと。あそこでインザーギが投入されていた方がドイツにとっては厳しかったと思う。
結果的にジンクスは守られた。しかしそれはイタリアにとってのPKのジンクスではなく、「ワールドカップではドイツはイタリアに勝てない」という方のジンクスだった。
もうひとつ正直に言えば、昨日フリンクスが出場停止という情報を聞いた時点で「これは勝てない」と思っていた。ただでさえ今回のイタリアと戦うのは厳しいのに、チームのバランスを一身に担い、攻めに守りにと大活躍していたフリンクスがいないのでは勝てる気がまったくしなかった。だが予想に反してフリンクスに代わって出場のケール、そしてシュバインシュタイガーに代わって出場のボロウスキーがよく頑張り、イタリアに押されつつもあと一歩でPK戦というところまで持ち込んだ。そしてイタリアはデル・ピエロ投入。「勝てる」と思った。思ってしまった。
その気持ちの分だけショックは大きかった。試合開始時点では延長にももつれず、90分で結果は出ると思っていたし、それはおそらく悪い結果だと思っていたから、その通りの結果になってもこれほどのショックはなかったと思う。なのに延長も残り2分で…。デル・ピエロの2点目は余計だが、どうでもいいことだ。
今大会のドイツはよく頑張ったと思う。大会前はベスト8がせいぜいだろうと言われ、それこそ大会前の親善試合ではイタリアに1-4で大敗、日本にすら2-2という失態。クリンスマンは痛烈に非難されていた。
それが始まってみれば緒戦こそ2失点したものの、その後は無失点で、しかも見事な勝ちっぷりでここまで上がってきた。その勝ち方はドイツ国民やドイツファンだけでなく、ワールドカップの開催国の活躍という意味でも大会を盛り上げた。しかもシュバインシュタイガーポドルスキー、ラーム、メルテザッカー、ケール、オドンコールらは皆22歳前後だ。彼らは次の南アフリカ大会だけでなく、8年後まで期待できる。
そう考えれば今日の敗北も唇を噛みつつも受け入れられるような気がしてきた。クローゼだって32歳になる4年後にまた5得点すれば、今大会ゲルト・ミューラーの記録を塗り替えたロナウドの記録に並ぶ。6得点すれば再び記録をドイツに持ち帰れる。今日の敗北を胸に、これから先のドイツ代表の活躍を楽しみにしたい。まずは2年後のEUROだ。
ただ、バラックにとってはこれが最後のワールドカップになるやもしれず(おそらくなるだろう)、それだけが残念だ。