『ハミングライフ』(2006 日本)

http://www.humminglife.net/
監督:窪田崇、出演:西山茉希井上芳雄佐伯日菜子
恋愛小説アンソロジー(?)『LOVE or LIKE』に収録された中村航の原作を映画化した作品。『LOVE or LIKE』は一作目に伊坂幸太郎や某中田永一が参加した『I LOVE YOU』の二作目みたいなやつですね。
で、もともとこの『ハミングライフ』という原作が、GOING UNDER GROUNDというバンド(私は知らないバンド)の『ハミングライフ』という曲にインスパイアされて書かれた作品だったらしく、音楽はそのバンドの方が担当して、チョイ役で出演までしてらっしゃいます。
で、えーと映画の感想なんですけどね。うーん、ここまでヘタレな映画は久々に見ましたよ。原作読んでないんですが、多分原作のせいってわけでもないと思う。深夜ドラマでならまあいんじゃない、という感じでした。
ファーストシーンで、西山茉希演じる主人公がおそらくは借りたばかりのアパートから外出する、という映像が流れるわけですが、この際に主人公のうら若き女性は夏場とはいえ部屋の窓も閉めず、玄関の鍵すらしないで部屋を出て行きます。これは、彼女が田舎から上京してきたという設定に対する理由付けとしてそうなったのかもしれませんが、今時そんな女性いるか?。というか「地方から上京してきた」=「鍵閉めない」という短絡思考が凄いと思った。その連想よりも違和感の方が全然デカイよ。
で、タイトルロール。これがまた今時かっていう映像。いわゆる「大都会の風景」なわけですよ。渋谷とか新宿とか。都会のゴミゴミした感じ。きらびやかさではなく。とどめに首都高のテールランプがこう線上になってる映像まで流れる。いつの時代だよ。っていうかカラオケのバックに流れる映像かと思ってしまった。
そんな感じで、いちいち気になるところが先に立つ演出なんですよ。財布に紙幣が一枚もない状態になるまでバイトも探さないヒロインとか(これは原作の設定がそうなのか?)、それなのにバイトはじめて数日でエアコン買ったりとか(バイト代いくらだよ!)、挙句の果てに映画は夏から秋にかけての設定なのに、エンドロールのCGイラストでは雪降りやがる。季節は巡ったという演出なのだとしたら片腹痛いです。なんなんですか、もう。
まあ、監督ばかり責めるのは可哀相というものですが、そうはいっても主演のマッキーこと西山茉希はCanCanモデルで、私にとってはSRS(格闘技情報番組)のアシスタントという存在でしかなく、これが映画初主演(というか他にどれくらい出演経験があるのかもしらない)ということですから、あまり期待をかけてもいけない。そこは差し引いて見ないと。
というか彼女に対する演出だって監督の仕事だと思うわけです。なのに彼女は普通に歩く時もモデル歩き(若い女性ってそういうもん?)だし、服飾デザイナーを目指しているとはいえ、超貧乏なはずなのに一度として同じ服装が出てこないとか、初っ端から流れる彼女のモノローグがあまりに棒読みすぎるとか、少しはなんとからならんかったのか、と思う次第。
彼女のファンであれば、65分(!この短さでアレだけ退屈というのも凄い)の間、ほぼ全編に渡って彼女が映るわけですから楽しいのかもしれませんが、そうでない場合は正直「むー」としかいいようがない。
とにかく始まって五分で「これは期待できんな」と思って眠ってしまうかと思われたわけですが、ツッコミどころが多くて寝るどころじゃありませんでした。途中で空想シーンとかが入るんだけど、この演出もありえないと思った。
あと、個人的に一番の笑いどころは、犬がいなくなっちゃうシーンで流れる曲。これまでの映画の雰囲気とはかけ離れた深刻な音楽がかかります。そんな深刻なシーンでもないのに火サス並み。笑うしかない。
そんなわけで、ほぼ全編がマッキーこと西山茉希のイメージアップ(?)ドラマというか深夜ドラマ(アイドル押しのやつ)みたいな映画なので、ダブル主演扱いのはずのミュージカル界のプリンスである井上芳雄はほぼ台詞なく(95%モノローグ)、出番もありません。そういう意味で彼に関しては可もなく不可もなく、という評価しかできない。
彼以上に出番のあるのが佐伯日菜子なんですが、彼女のキャラ作りがまた微妙。っていうか変。あれは彼女の判断なのかなあ。なんとなく監督の責任にしたくなりますが。あんな女優だった?
よかったところがあるとすればエンドロールで流れるイラストかなあ(そんなところかよ)。こういう絵柄は好きです。というかどっかで見たことある絵柄なんだよなあ。思い出せない。気になる。
ひとまず原作を読んではみたくなりました。それにしてもこの映画の感想はほとんどWEBに載ってないなあ。まあ上映館が少ないから仕方ないんですが、この映画の感想はかなり気になるけどなあ。
いやまあ、とにかくいいところ探しも困難を極めるような映画で、この監督に次の仕事が来るのかどうかという余計な心配までしてしまいます。自主映画でももっと見るべきところはあるのになあ。商業映画ってスゴイね。

LOVE or LIKE

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I love you

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