K-1 MAX 日本代表決定トーナメント

再び日本代表決定トーナメントの参戦を義務付けられ、不平タラタラ、「全員KOで倒す」と豪語していた小比類巻。そうはいっても一回戦の相手はまだ素人に毛が生えた程度のアンディなんだし、相変わらず小比類巻ガード網(包囲網にあらず)は健在。せめてアンディが一泡吹かせてくれれば、と思っていたらまさかまさかですよ。
小比類巻は「一週間前に骨折が再発した」といっていますが、それにしたってダウン取られてるし、なにより結局は「自分から攻めずカウンター待ちで、できることはローキックだけ」というどうしようもないスタイルは何も変わっていなかった。アンディがローのダメージ溜まってコーナーに追い詰められても、出すのはローだけ。リスク負って手を出す、という行為ができない以上ファイターとしての期待度はゼロ。相手が攻めてくればカウンターの膝とか出せるんだろうけど、アンディはリーチが長く、ストレート系パンチが主体だから間合いが詰まらず膝も届かない。単純にローだけのジリ貧でした。
K-1ももう小比類巻を守り続けるのはやめたらどうか。ここはひとつ佐藤と戦わせてハッキリと引導渡した方がいいんじゃないのか。それにしてもアンディにはビックリ。本人はまったく記憶がないらしいが、それであれだけの戦いができるんならキャリア積んだらいい選手になるかも。特にストレートはいい。いわゆる「槍」型のストレートなのでダウン取りやすいし。今後に期待。
その他の一回戦も全て判定、準決勝も判定ということで一般的には面白みには欠けたかもしれないが、個人的には楽しめた。色物かと思われた尾崎、前述のアンディといった選手が思った以上のクオリティで、試合のレベルは高かった。特に尾崎はテコンドー選手の弱点ともいわれるローキックに対しても最後まで耐えたし、トリッキーなだけじゃなく、オーソドックスに戦ってもやれることを示した。こちらもまた楽しみな選手だ。
ベストバウトはTATSUJIHAYATO。MAXらしいスピード感溢れる、真っ向からぶつかり合う高勝負だった。テクニック的にも高かったし。そういう意味ではHAYATOが一回戦で消えてしまうのはもったいなかった。小比類巻なんかよりも、こういう「勝とう」という試合を見せてくれる選手をもっと大事にして欲しい。待ちが悪いわけではないが、それしかできない、しかもそれで勝てない選手を見たいとは思わないなあ。
で、結局二年連続佐藤が優勝したわけだが、佐藤のあのスタイルは、昨年時点で既に完成していて、今年はそれも変わらない。あのスタイルで日本トーナメントは勝ち抜ける、ということはこれで再確認できた。ただ、じゃあそれで世界トーナメントは勝てるのか、というと違うと思う。あのブアカーオでさえ、同じスタイルで勝てないとわかってからは、パンチを鍛えてスタイルを変えて進化した。果たして佐藤はどうなのか。自分のスタイルを守ることも大切だけど、現時点ではあれで世界も戦い抜ける、少なくともブアカーオとサワーに勝てるとはあまり思えないなあ。
あと個人的に、佐藤の一番の凄さは、常に一定のテンポでパンチまたはキックを出し続けることだと思う。一般的にいえばラッシュというテンポではないし、回転数も低い。だが、佐藤は自分の心肺機能や筋力を熟慮して、あれが一番いいテンポだということをわかっている。そして、一時たりともそれを崩さない。相手を追い込んだらラッシュしたくなるのが人情だが、佐藤は決してペースを崩したりはしない。それをすれば無呼吸運動になるし、ラッシュで倒せなければスタミナを消耗し、相手のチャンスになることがわかっているからだ。しかし、わかっていても倒しに行きたくなるのが人情。佐藤の凄さは常に自分のスタイルを失わないそのメンタルにあると思う。
スペシャルファイトのクラウス、ブアカーオという歴代王者の試合もまた驚きがあった。クラウスは確かに顎が弱いとはいえ、まさか1R1分少々で2ダウン。これはディレッキーが強いのか。クラウスがダメすぎたのか。少なくともディレッキーにはパンチがある、ということはわかったので、次はザンビディスあたりとやらせたら面白い試合になるかも。
一方、桁違いの強さを見せ付けていたブアカーオがアマラ相手に判定までもつれこんだ。テレビでは3Rしか放送されなったが、それでもブアカーオの格の違いは明らかだった。コーナーでアマラのパンチをかわし続けるシーンは鳥肌立ったよ。というか判定までもつれたのはトーナメントの選手たちのスタミナを気遣ったのかも、とすら思った。
魔裟斗はまだ今年試合してない(年末の試合も参考にはならないし)ので、どうかはわからないが、今年もブアカーオが頭ひとつ抜けるのか。あとはサワーの調子がどうかというところ。小比類巻もいないし、今年の世界トーナメントは楽しめそう。