『冬のユリゲラー』ヨーロッパ企画

作・演出:上田誠、出演:諏訪雅/土佐和成/中川晴樹/本多力/山脇唯/人羅真樹(イクイプメン)/首藤慎二(ベビー・ピー)/岡嶋秀昭/他
CXの『劇団演技者。』でも取り上げられたのでちょこちょこと内容は知っていた。それでもやはりヨーロッパ企画の役者たちが演じているところを観ると面白さが込み上げてくるなあ。
とある喫茶店を舞台に集まった超能力者達が繰り広げるドタバタコメディなんだけど、実はとってもウェルメイドでハートフル(お前はルー大柴か)なストーリー。今まで観た中では『サマータイムマシン・ブルース』と同じくらい一般受けしそうな内容で、テレビがこれに目をつけたのも理解できる。夏と冬、両極端ではありながら、上田誠は季節感とか活かした作品を描くのが巧い、というか制約があるほどいい脚本がかけるタイプだと思う。全ての脚本で、何らかの制約を自分に掲げてるし。
中川晴樹ファンの私だけれども、この舞台で一番よかったのはなんといっても土佐。初演時は永野が演じた「細男」。まさしく永野にあつらえて描かれたような皆から責められまくりなキャラなんだけど、永野とはまったく違う雰囲気で見事に演じ切った。テレビでは千原ジュニアが演じていたということもあって、ヤンキーキャラにしたのは影響もあったのかもしれないけど、とにかく虚勢の張りぶりとかテンパりぶりがいちいちおかしくて、後半は舞台後方の土佐から目が離せなかったほどである。
もちろん中川晴樹をはじめとして他の役者もよかったのだが、マスターに関しては他の役者と質が違う演技で、これはもう瀬戸中がいないことに起因する、というか瀬戸中仕様で他の役者にも演じさせているため仕方がないことかと思う。あの異様なトボケぶりは瀬戸中にしか出せない味なので、彼がいないことを今回ほど残念に思ったことはない。せめて演出だけでももう少し変えるべきだったかも。
ADの配役が山脇さんだったことも好印象。なぜか山脇さんは虐げられているけど頑張ってる、というか父性本能をくすぐる役がよく似合う。そのせいでラストのハートウォーミングな展開に引き込まれやすい。それまでの怒涛のドタバタからは考えられないほど優しい展開になるから、この違和感を感じさせなかったのは山脇さんのキャラに拠るところが大きい。
というわけで脚本の質という意味では『サマータイム〜』や『平凡なウェーイ』と並ぶくらい気に入った作品なんだけど、やや間が冗長に感じた(珍しく暗転も多い)のと、一部「さっさと進行して欲しいなあ」と思ってしまう場面があったのが残念。いやもう贅沢な注文なのはわかってますけどね。とにかく面白かったことは大前提で。