『苦悩のピラミッダー』ヨーロッパ企画

作・演出:上田誠、出演:石田剛太/酒井善史/角田貴志/永野宗典/西村直子/松田暢子/中西武教(ジュース)
某巨大掲示板風にいうと「その発想はなかったわ」ということになる。紀元前2000年のエジプトを舞台にピラミッド建造プロジェクトのドタバタ(ただしプロジェクトリーダーのみ)を描いた作品。
とはいえ、そこはヨーロッパ企画だし上田誠だしってことで、交わされる言葉は現代、というかIT系のシステム構築ミーティングとかで交わされてそうな会話ばかり。その実建造しようとしているのがピラミッド、というミスマッチを楽しむ作品。
社長(王様)のトップダウンで作りたくもないピラミッドを作ることになった実務リーダー達のプロジェクトをそのままなぞった形になっているので、脚本的に凝ったところはあまりなく、とにかく設定と会話だけで持っていく。次々に巻き起こるアクシデントもアッと驚くような展開での解決はなく、行き当たりばったりでなんとか対処。この辺の妙がヨーロッパ企画らしさ満載、というか永野と石田らしさ満載。
それに対して酒井さんが冷静に理系ツッコミ入れまくる、という個人的なツボを押されまくり爆笑し続けた。「2倍じゃなくて8倍」はこの日最高の笑いだった。そして、圧倒的に正論のはずの酒井さんが駆逐されていく様はシュールな人間悲劇を見ているかのようだった <嘘です。
『囲むフォーメーションZ』の時も思ったけど客演の中西の特殊天然系の芝居はスゴイね。ある種凄味すら感じる。現実にいたらメッチャコワイタイプ。
で、まあ松田さんなんですが、エジプト衣装のコスチュームプレイはもう反則です。観ている間中ドギマギ(<死語)です。芝居中に何度も妄想の世界に行きそうになりましたがかろうじてこらえました。アホです、ハイ。
初演時はおそらく神官が玉田、建築士が瀬戸中、松田さんは召使で、財務大臣は清水さんだったのでは、と想像するのだが、過去の記録によると諏訪、本多も出ていたらしいので、キャスト数も含めて書き直されているみたい。できることならば初演時と比べて楽しみたい一作。
ある意味ではどんな状況でも「ヌルく」なってしまうヨーロッパ企画の真骨頂のような作品でした。