『火星の倉庫』ヨーロッパ企画

作・演出:上田誠、出演:出演:石田剛太、酒井善史、諏訪雅、角田貴志、土佐和成、中川晴樹、永野宗典、西村直子、本多力松田暢子、山脇唯
劇場がサンモールに変わってどうなるかなあ、と思っていたんですが、舞台は広くなっても相変わらずのヨーロッパ節でした。セットの作りこみも変わらずで、ああいう高さの使い方した芝居ってちょっと見たことがなくて感心した。いわゆる箱足を芝居の最中に組み替えて舞台を変更するのはよくある手法だけど、それ自体に必然性を持たせ、セットとしての違和感をなくすってのも見事だった。
いつもながらの面白さだった、とはいえ、ラスト間近の展開にはもうビックリでした。それまでがあまりにもいつもどおりのヌルーい雰囲気だっただけに、あそこで見せた急展開には口あんぐり。というか普通の芝居、というよりもむしろ小説とかだったら間違いなく「クズ本」の烙印を押されかねない展開ですよ。しかし、それでもすんなりと話が進んでしまうのがヨーロッパクオリティ。そういう意味での演出上のギャグの使い方が見事。とんでもない展開をギャグで推し進めることで、観客がその状態を笑っている間に、本来の違和感を払拭してしまう。『サマータイムマシン・ブルース』とかでもそうだけど、そういう突飛な設定を観客にスルリと納得させるのが本当に巧いと思います。
役者的には、酒井さんの出番が少なく、得意の理系ツッコミがなかったことが非常に残念(酒井さんの理系ツッコミをこよなく愛する会代表)でしたが、それ以外は皆自分のキャラを活かしたいつもどおりの芝居を見せてくれました。特に永野は冒頭以外まったく身動きできないという設定でありながら、見事なまでの自己主張。個人的には永野放置プレイシーンがもう少しあってもいいくらいだった。
土佐のチンピラキャラは完全に持ちネタとして完成したようで、回しキャラとしてはもう外せない。その分、今まで回し役だった石田が諏訪と絡んで好き勝手やる機械が増えたのも嬉しいかもしれない(松田さんを助け出すシーンとかは腸捩れた)。そしていつも最終的には一番困ったハメに陥る中川晴樹の芝居が個人的には非常に好きである。久々に松田さんが悪女キャラじゃなかったのもよかった(その分最近は山脇さんがヒドイ目にあってる気がする)。
そして、今回一番驚いたのはラスト、というかエピローグ(?)。まさかまさかの展開で、これまでヨーロッパ企画の芝居を見てきた中で想像もつかないラストであった。なぜああいうラストになったのか、激しく上田誠に問いたい。いや、悪いとかじゃなくて純粋になぜああいう終わり方を選んだのかがすんげえ気になる。
あと、余談ですがこの日に見に行ったメンバー6人中4人が三本組DVD買って、特典としてついてくるポスター三種の中からひとつ選ぶのに全員同じポスター選ぶってどゆことですが。少しは考えようよ。