明日に迫った後輩の結婚式のために、昨晩はまたもカラオケボックスで司会の練習。今回はコンビ芸(芸?)なので、相方との合わせが必要だったので、それもあって。うーん、二週間前にひとつこなしたばかりだというのに、やはりまだまだ口の滑りが悪いなあ。鼻が詰まっていたせいもあって発声がうまくいかない。明日に向けて体調を整えよう。
ということもあって、ここのところの疲れを癒すため、今日は午前半休をいただいて、ゆっくり眠っていたわけですが、朝起きてテレビをつけたら『ガイアの夜明け』の再放送がやっていた。「今、本を売りにいきます」(わかりやすいパクリだ)という内容の回で、出版不況に追い込まれた出版業界にスポットを当てたものだ。内容としては「Y世代」と呼ばれる20代までの若年層をいかに惹きつけるか、というもので、『Deep Love』の作者Yoshiと、『ザ・エージェント』の作者で日本発のエージェント会社を立ち上げた鬼塚忠をメインに扱っていた。まあ、正直大した内容ではなかったんだが、インタビューの中でYoshiが言っていた「音楽にはインディーズがあるけど、本にはない」という発言がちょっと面白かった。『Deep Love』自体は本読みの間ではけなされまくってるし、私も読もうとすら思わなかったけど、作者自身は様々なマーケティング戦略を意識しているということはよくわかった。その意味では、面白い存在だね。エージェントの方は、普通に大手の出版社の編集者とかが訪ねてきて企画を買って行く姿を見て「ああ、ここまで来たのね」と。中には「新人発掘は私には出来ない」と断言する編集者もいて、出版社の体質自体が変わってきたことを如実に感じさせた。出版業界も専門性が高められて分業化、アウトソーシングが進むと考えていいんだろうな。遅れすぎだけど。

先週の記事ではあるが、出版業界新聞『新文化』で、「ポイントカードの是非」について日書連の理事の寄稿が一面掲載されていた。私も今年に入ってから導入された三省堂のポイントカードを利用しているが、全国的にもポイントカードを導入する書店は増えているらしい。
以前から出版社各社や取次を含めた組合や団体ではポイントカードに対する根強い反対があった。これに対して、なぜ今ポイントカードを導入する書店が増えたのかといえば公取委の課長が公式にではないが「ポイントカードは問題なし」との発言をしたことが原因であるらしい。
しかし、これには法的根拠は薄弱で、今をもって尚、出版社や取次はポイントカードに反対をしている。そして、ここにきて日書連の理事が出てきたのは、
「ポイントカードは、再販制度(本の定価売りの原則)という法律に違反していて、法律を律儀に守ってポイントカードを導入しない書店が損をする。正直者がバカを見る、という状態はおかしい」
という背景があるからのようだ。
しかし一面のほぼ8割を占めて寄稿されたこの記事を読むと、「なんだかなあ」と思わずにはいられない。ここで長々と書かれている内容の行きつく先、というか繰り返されている言葉が「ポイントカードは書籍の割引であり、再販制度に違反している」ということばかりなのだ。違反しているからダメ、確かにそれは正論だが、多くの書店だってバカじゃない。違反してまで(公取委の人物は「正当」と語ってはいるが)ポイントカードを導入したのはいったいなぜなのか。その原因はどこにあるのか。そういった指摘がまったくない。「正直者がバカを見る」。律儀に経営している書店が閉店に追い込まれてしまう、と寄稿者は言うが、ではポイントカードを導入しなければ書店は倒産に追い込まれないのか。否、だからこそ、各書店はこぞってポイントカードを導入したのだ。現状のままではジリ貧だと思うからこそ、なにかを変え、それも出版業界側からだけの論理ではなく、消費者に向けた行動を取ったのだ。そうした意味合いを無視して「違反だからやめさせろ」という。この認識が「なんだかなあ」なのである。
もちろん、この記事の中でも「ポイントカードによって割引された差分は、最終的に出版社に跳ね返り書籍の定価を高騰させる。その結果損をするのは消費者だ」という論理が展開されている。しかし、それは果たして真実だろうか。割引という手法がメーカーに影響を与える、というのは間違いないだろう。それはどの分野の業種でもいえるに違いない。が、しかしその結果として書籍の定価が高騰する、苦しむのが消費者だ、という結論はよく理解できない。前提の理論は一般論、というかビジネス的には理解できる話なのだが、導き出される結論はそうではない。というか、この寄稿者はなぜ今の時代が「デフレ」と呼ばれているのかを知らないのだろうか。多くのメーカーがなぜ苦しんでいるのかを知らないのだろうか。売値は下がる、その反動がメーカーに返ってくる、だが安易に定価をあげることは出来ない。それはつまり競合他社との戦いに負けることを意味するからだ。それは小売店も同様で、他店よりも一円も安く売りたい、しかし卸値は変わらない。それでも人を呼ぶために値段を安く設定する。それが現在の在り様だ。
ではなぜ「書籍の定価が高騰し、消費者が損をする」と言うのか。それは、まさしく再販制度があるからだ。書籍の定価は守られている。したがって、小売店である書店は値段を安くすることは出来ない。そこでの競争力は発揮できないのだ(だからこそポイントカードを導入するわけだが)。
そして、出版社においては「競合他社との争いに勝つため、価格を下げる」という概念は殆んど存在していないと思われる。それ以前に「商品によって価格を設定する」という概念すら曖昧である。辛うじてあるのは文庫、ノベルス、新書、そしてページ数という仮の判断基準だけで、文庫であれば小説でもエッセイでもノンフィクションでも同じような値段をつけ、作者によって変わることもなく、ましてや他社の同様の本との価格差も意識されることなく、そしてそこにユーザやマーケットを見越した価格設定は存在しない。まったく意識していない、とは言わない。だが、それが反映されていないのが現状である。
やや、話が逸れてきたが所詮、自分の脳内ブレストのためのメモなので気にしないことにする。つまりは再販制度に始まり、再販制度に終わる、ということなのだ。そして「ポイントカードの導入」という手段は、書店の再販制度に対する表立ってではないが、ささやかな抵抗なのである。この「ジリ貧」の状態をなんとかしたい、消費者を自分の店に引き寄せたい、という書店の思いの表れなのである。それに対して「再販制度に違反しているから止めたまえ」と、言うことに何の意味があるのか。価格競争も出来ない、欲しい本が必ず手に入るわけでもない、(実際はそうではない気もするが)本離れは進んでいて書店に足を運ぶ人も少なくなっている。そうした中で、書店は何ができるのか。ポイントカードがダメならどうすればいいのか教えてくれ、というのが書店の本音ではないだろうか。
長々と書いてきたが、結局思ったことというのは日書連のお偉いさんが、こんなことを堂々と業界紙の一面で書いている状態では、現在の凝り固まった体制に縛られた業界の活性化には程遠いな、ということである。これだけ書いてそれだけかよ。