購入本

  • 『CUE -1-』村上かつら(ISBN:4091873812)
    短編集を読んで気に入ったというのもあるし、演劇がテーマということもあって読みたくなった。まあ、私のような小劇場アマチュア劇団関係者とは違う部分の話なんだけど。ストーリーは二軸になっていて、ハンドボール部なんだけど腕を怪我して最後の大会を棒に振ってしまい、行き場を失った中学生・竹田と、そんな彼を演劇部にスカウトする不思議少女・伊藤が中心の話と、アマチュア劇団でひきこもりの演出家と幼馴染の俳優、そして彼らの同級生だった女性が中心になる話。正直、この構成はよくわかんなくて焦点がぼやけちまってる気もする。少なくとも竹田の話をちょん切っちゃう必要性はないと思うし。この後の展開はどうなるんかな。ただ、やっぱこの作者は台詞がいい。というかその台詞を言わせるシチュエーションがいい、と思った。あんまり芝居のエキセントリックな部分は表に出さずに描いて欲しいと思うのは私が芝居関係者だからなのかなあ。
  • ヒストリエ -1-』岩明均(ISBN:4063143589)
  • ヒストリエ -2-』岩明均(ISBN:4063143597)
    『ヘウレーカ』に続く(続編ではない)古代ローマ絵巻。1、2巻同時発売。帯を読むと一見アリストテレスの物語のように思うんだけど主人公はとある過去を背負った青年エウメネス。導入でエウメネスアリストテレスが遭遇するけど、半ばから2巻まではエウメネスの少年時代が語られる。岩明均は『ヘウレーカ』でもそうだったけど、古代の、まだ人間達の生活に「戦い」や「死」が身近だった時代を書くことに偏執している節がある。『雪の峠・剣の舞』では戦国時代、そして名作『寄生獣』もまた生存競争としての「殺し合い」を描いた作品だった。そしてまたそうした「殺し合い」を描くのにこの人の絵柄は相応しい。どこか空ろな印象を与える登場人物たち(特に正面顔)、そして陰惨さとはまた別な印象を与える血や死体の描写。冷静とも冷酷とも違う、醒めた、というか達観したような視点の持ち方が不思議である。そうした人間の利己的遺伝子のもたらす「殺し合い」を描きつつも、岩明均が更に固執するのは、人間の知恵による戦いである。『ヘウレーカ』ではアルキメデス、この『ヒストリエ』ではアリストテレスという古代ローマの二大知性が、戦いの中で大きな功罪を果たした姿を描く。そういえば『寄生獣』でもミギーは人間の身体全体を乗っ取れなかったというハンディの代わりに「知性」という武器で戦ったのだった。ただ岩明均は人間の知恵が戦いを更に残酷なものにする、といった単純なテーマを描こうとしているわけではない。むしろ自問自答しながら描いているようにみえるところが、この人のマンガの面白さだといえるのかもしれない。『寄生獣』のような多くの人に受けるエンタテイメント性は薄いけど、個人的にはオススメ。でも、読んでて辛くなるとは思うけどね。岩明均はホントに登場人物を見事に斬り捨てるから。
  • ブラックジャックによろしく -10-』佐藤秀峰(ISBN:4063289893)
    引き続き精神科編。担当している患者に良好な変化が現れはじめた矢先に、大きな社会的な事件が。相変わらず病院の持つ「病巣」に突っ込んでるんだけど、この問題は今までの話と違って自分自身が「加害者」になっている部分もあって複雑。どれだけ偽善者を装っても、自分の中に「精神病患者」に対する偏見があるのは偽れない事実なので。これは病院側が情報をクリアーにすることだけではおそらく解決しない。ただ、最近思うのは「精神病」とされている人間よりも、そうした判断をされていない、いわゆるDQNと呼ばれる人の方が怖いよな、ってこと。病気である、という前提があるだけでも逆に偏見という名の予備知識にはなるわけだし。話はズレちゃうけど、自分はホントにマスコミという存在が嫌いだ、ということを再認識した。毎日のようにしてるけど、改めて。
  • マンガ学への挑戦夏目房之介(ISBN:4757140843)