蹴球微熱 コンフェデレーションズカップ 2005 メキシコVSアルゼンチン

この準決勝を終えて、残すは3位決定戦と決勝戦のみとなったが、個人的にはこの試合が今大会のベストバウト。堅い守備と狭い範囲での攻防を得意とする両チームの技術力の高い試合。そしてコロッチーニのファウルによって観客が一斉にメキシコ応援モードへ。そして延長戦での劇的なゴールシーンを経てPK戦で決着。一年後に控えたワールドカップを見ているかのような濃密かつ、観客も含めて盛り上がった試合ではなかろうか。
高さのないメキシコ(除くボルゲッティ)は昔から日本のお手本チームとして名を挙げられてきたが、この試合を見た人ならわかるように日本がメキシコに追いつくのは当分無理だと思われる。一番の違いは「自分がフリーだ」と感じる結界の広さだ。これが決定的に違う。そしてこれはいくら技術力が上がっても簡単に変わるものではないと思う。彼らは敵が1メートル先に迫ってくるまで落ち着いてボールをキープするし、見方が同じ様な状況でいればフリーと考えてパスをする。だからこその狭い範囲での攻防が可能になる。ホントに素晴らしい。アルゼンチンも同様な展開を好むが、よりドリブルを多用するという違いがある。どちらにしろ、世界最高のクロスレンジでの打ち合いだった。
そして、ディフェンスの攻防もまた見応え充分。高さと強さで敵を蹴散らすアルゼンチンに対し、ポジショニングの良さで相手を切るメキシコ。どこまでをピンチと捉えるかで意識は違うのだろうが、日本だったらピンチの連続、と感じる様な守りをメキシコは平然とする。例えペナルティエリア内で敵にボールが回ってもシュートさえ打たせなければいい、というのがメキシコの考え方だ。象徴的だったのはソリンのシュートがGKのサンチェスを越えてゴールに向かったシーン。恐ろしいほど冷静にDFがゴール直前でクリアした。あれがメキシコのメンタルだ。
90分で決着つかずの延長。素晴らしいドリブルでアルゼンチンを引き裂き、コロッチーニの足にぶつかったボールがアルゼンチンゴールへと吸い込まれたあの瞬間。途中から悪役にされたコロッチーニが悪役としての見事な結末を迎えたように見えた。しかしアルゼンチンはそこから意地を見せての同点ゴール。これまでボールの出し所を潰してきたマルケスを退場で失ったメキシコとしては致し方のないところだろう。
PK戦はもはや運。どちらの勝利でも変わらない。それでも5人が5人とも、両チーム併せて10人が見事に落ち着いてPKを決めたシーンはこの試合を象徴するレベルの高さだったと思う。
この試合が見れただけでも今年のコンフェデはよかった。決勝はまたブラジルVSアルゼンチンという南米究極のカード。リケルメロナウジーニョの戦い。アドリアーノフィゲロアの得点王争い。残念なのはロビーニョに対抗するはずだったサビオラが一発退場で決勝に出れなくなったことだが、それでもこの試合を見逃すような真似ができる人がいるんなら教えて欲しいよ。