『死神の精度』伊坂幸太郎(ISBN:4163239804)

人が死ぬ前に現れ、その人間が死に適しているかかどうかの判断を下す「死神」を主人公とした連作短編集。【死神の精度】【死神と藤田】【吹雪に死神】【恋愛で死神】【旅路を死神】【死神対老女】の6編を収録。表題作の【死神の精度】は推理作家協会短編賞を受賞。
当然ながら伊坂幸太郎なわけですから、及第点は軽く突破。それを踏まえた上での感想としては、うーん物足りん。まず、表題作がぬるい。これが推理作家協会賞とは。正直、一編目を読んだときは落胆しました。しかし、読み進めて行くうちに、一編ずつが上り調子。ラストの【死神対老女】なんぞは伊坂幸太郎得意の伏線まくりでキッチリ納めてくれます。これは見事だった。それはいいんだけど、全体的な感想としてはやっぱ物足りんのですよ。「もっとできるでしょ!」みたいな。
死神という主人公を描いていて、その個性はほどよく出ているものの、どこか活かしきれてない部分も感じる。あと逆にうまく設定を作りきれてないな、という部分も。それは大概、他の死神との交流部分だったり、対象の死に際だったりするんだけど。
いや、面白いし、オススメであることは間違いないんだけどね。大満足、とはいかなかったんですな。というかそろそろ長編が読みたいなあ。
あ、余談。これは完全に個人の好みの問題ですが、いちいち死神が「ミュージック」というのがなんかぞわぞわした。伊坂幸太郎が仕掛ける、こういうちょっとズレた感じのスタイルは肌に合わないとなんかぞわぞわするんだよね。概ね好きなんだけど、今回はこれがちょっとダメでした。作者の意図はわかるんだけどね。