本屋大賞再び

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どうせ皆書くと思ってたでしょ?。正直なところ「はいそうですか」という気持ちが大半を占めてるんだけど、ニュースでも大々的に扱われてるし、よほどの本読み、本好きは別として、世間一般に対する影響力は大きな賞になってしまったので、一応書いておく。とまれ、ほとんど昨年書いたことと変わらないが。
昨年の日記↓

まずはじめに、多くの人が思っていることなのだろうけど、念のために書いておくと「既に100万部以上売れてる作品が選ばれるってどうなのよ」という気持ちはどうやっても拭い切れない。
本屋大賞の設立意思として挙げられているコピーは、

売り場からベストセラーを作る!

というものである。まあ、結果として100万部売れた本が200万部、300万部売れれればベストセラーを作った(既にベストセラーだとしても)ことになるのかもしれない。最終的に設立の目的である「出版界の活性化」に繋がればそれはそれでいいんだと思う。
ただ個人的には、「商品である本と、顧客である読者を最も知る立場にいる書店員が」選んだ本が100万部突破のベストセラー、もしくは直木賞受賞作や候補作なのかよ、というのが偽らざる気持ちである(だからこそむしろ、という意見もあるだろうが)。
この結果を素直に受け止めれば、「年間数万点、小説だけでもおそらく1万点近い本が出版されていても、いい本というのは結局これしかないのね」という風に感じてしまう。今回ノミネートされた11作品のうち、10万部を超えていない本というのが何作あるだろうか。もしくは他の賞にノミネートされたり、受賞したりしていない作品が何作あるだろうか。
昨年も書いたように、本屋大賞の構造上「多くの書店(員)にまで行き届き、かつその後の流通の問題も含めたらこういった作品が選ばれるのは致し方ないことなのかもしれない。統計学上の必然ともいえるのかもしれない。何がどう選ばれるにしろ、それで書店のモチベーションが上がり、多くの人が本を手に取ればそれでいいのかもしれない。
ただ、私の勝手な思い込みだが、幼い頃から憧れをもってきた「書店」と「書店員」という存在が「本を最も知る立場」として選んだ本が、結局は他の選考で選ばれた本と変わりがない、というのは少し残念だ。テレビや新聞では報道されなくても、大規模な広告が展開されなくても、ドラマ化や映画化がされなくても、「こんなに面白い本があるんだよ」と教えてくれるのが「本屋さん」だとどこかで期待している気持ちがあるからだ。それは本当に勝手な思い込みです、と言われてしまえばそれまでだが。
日本という国は今、経済格差が大きくなりつつある、といわれている。儲ける人は儲け、そうでない人はますます貧しくなる。一億総中流家庭、なんて言葉は過去のものだ。しかし、本屋大賞の結果を見ていると、格差は経済だけじゃないのかも知れない、と思う。いや、現場では既に言われていたことだ「売れる本は売れて、売れない本は売れない」。それを改めて知らしめる結果になったということだろう。
本屋大賞云々ではなく、この格差自体がどこに起因しているものなのか。本当に「面白い本」と「つまらない本」の差が広がっているのか。この部分を放置しておいても本当に「出版界の活性化」はなるのか。問題はそこにあるんだと思う。
昨年も書きましたが、決して本屋大賞、ひいては本屋大賞に関係するスタッフや書店員の皆様方に対する非難、揶揄のつもりではありません。結果として、本屋大賞が書店や出版界に貢献している部分は大きいだろう、というのもわかった上で、一人の本読みの個人的な思いです(しかし本音)。
この構造上の欠陥(と私には見える)は、どうやっても埋められない、もしくは変えられないものか、と考える立場の人間としてはどうしても穿った見方になってしまうことはお許しいただきたい。
しつこいくらいに繰り返すが、何が選ばれようとどう選ばれようと、最終的にこの結果が出版界の活性化、書店の売り上げの向上に繋がれば、本屋大賞としての目的は達成していると思います。だからこそ、「本屋大賞が決まった!」で終わるのではなく、それを売り上げに繋げる努力、読者に届ける努力を書店及び書店員の方達には頑張って欲しい。それが回りまわって多くの「面白い本」「売れる本」が出版されれば、何もいうことはない。直接的に見える結果だけが全てではありませんから。