2006 FIFA WORLD CUP グループC セルビア・モンテネグロVSオランダ

開催国ドイツが「攻め」の姿勢を見せつけたことで、大会全体の雰囲気が盛り上がり、これまでの試合はどれも序盤から責め合うものが多かった。しかし、この2チームの試合はそれまでとは違い、一転静かなスタート。
サッカーを知り尽くした両国同士の大人な試合。相手のボールを無闇に取りに行くことはなく、やらせるところは自由にやらせて危険だけを断つ。セルビア・モンテネグロのこの対応は円熟味を感じさせた。
それに対し、ピッチの横幅を目一杯使い、自分達の得意のサッカーを徹底するオランダ。焦って攻撃するのではなく、時にはバックライン(高いけど)でボールを回し、行けると判断するや否やサイドのロッベンファン・ペルシーにボールを出して二人が前に付き進む。この繰り返し。前半のボール支配率が62対38というすごいことになっていた。
その静けさに満ちた、だが濃密な空間を切り裂いたのはやはりロッベンだった。前半のセルビア・モンテネグロの唯一のミス、というよりは計画になかった高いライン取り。それまでは自陣深くで守ることを徹底していたセルビア・モンテネグロがたまたま前がかりになった隙を見逃さず一本のスルーパスで一気にGKとの1対1に。それをロッベンが落ち着いて決めた。この時の早さ。守備ラインを抜ける一瞬、ロッベンのユニフォームが掴まれるのだが、それすらも置いてきぼりにするスピード。老獪さでは上を行くセルビア・モンテネグロの守備陣だがスピード勝負になったら勝てない。
その後はセルビア・モンテネグロも攻めの姿勢を見せだすが、やはり試合としては緩急がハッキリとした試合で、ワールドカップというよりもセリエAの試合のような感じだった。国を背負っての熱い戦いという感じではなく、純粋にサッカーの駆け引きが楽しめる試合。
互いに決定的なチャンスを作り出すが、結局最後はベテランの両GKが立ちはだかり1対0のまま試合終了。セルビア・モンテネグロはケジュマンの出来が今ひとつだったのが残念。ミロシェビッチが早々に下がったのもコンディション不足か。オランダはロッベンが絶好調だったけど、ファンニステルローイはあまり見せ場を作れず、このチームの核であるコクーも出来はよくなかった。この二人が本調子にならないと今後が厳しいだろう。
早々に死のグループで一歩抜け出したのはオランダとアルゼンチン。ただ、セルビア・モンテネグロコートジボワールもまだ見込みはある。ここはホントに紙一重の戦いが続くだろう。オランダもやはり懸念されていたセンターバックの質は低い。ドログバサビオラクレスポといった世界一流のFW相手に無失点で通せるかどうか。アルゼンチンはやや抜けた感はあるが、コートジボワールにやられている時間帯もあった。セルビア・モンテネグロはビリッチが帰ってくるし、ホントに最後まで読めないグループだなあ。なんにせよグループリーグの段階でアルゼンチン対オランダという一戦が見れるのかと思うと身悶えしたくなる。楽しみにしたい。