蹴球微熱 FIFAワールドカップ2006 決勝 イタリアVSフランス

それにしてもまさかジダンがあんな形でピッチを去るとは。最後は文字通りピッチに居場所もなく、表彰式にも出ていなかった。代表だけでなく、選手としての引退を公言していたジダンにとってはあまりに皮肉な結末。まあ、あの行為自体はレッドも致し方ないとは思うんだけど、あの審判はこの大会でルーニージダンにレッド出したということだよな。複雑。
良くも悪くもこの決勝戦マテラッツィの独壇場。アンリにファウルかましてPK与えたのもマテラッツィなら、同点弾をヘディングで叩き込んだのもマテラッツィ。そしてジダンを葬ったのもマテラッツィ。その後のブーイングは'98年のクロアチアのビリッチを思い出したよ。
そんな状態でもPK戦マテラッツィを起用するリッピもリッピなら、決めちまうマテラッツィマテラッツィ。空気読めよ!。
試合自体はフランスが押してた、というのは簡単ですが、この大会ではイタリアは殆どそんな試合ばかりなんだよね。それでも勝ち上がってきた。国内のカルチョが揉めてることもあって、選手たちのモチベーションが高かったということもあるだろうし、単純に「堅かった」というのもある。カンナバーロガットゥーゾという真ん中の二人。緒戦でネスタを失ってもマテラッツィが後を埋め、この活躍。もしネスタが怪我しなかったら今日の運命も変わっていただろうに。
フランスはとてもいいサッカーをした。ただし、ペナルティエリア前まで。いわゆる日本代表的な試合だ。攻撃の形は作れる。ただし、フィニッシュが決まらない。アンリが持ち込んでもカンナバーロが最後は防ぐ。リベリーは素晴らしい動きだったけど、シュートだけは枠に行かない。トレゼゲ、ウィルトールは今大会ではまったく存在を示せなかった。
敗れてうつむく選手たちに、直前に足を骨折して代表を去ったシセが松葉杖をつきながら慰めていた。「シセがいれば」と思ったのも事実だが、そうなるとリベリーの活躍はなかったかもしれない。やはり、このメンバーで決めるべきところを決められなかったことが敗因だろう。
イタリアは結局終わってみれば「カテナチオ」だ。もちろん、これまでの「守備だけ」のチームでなかったことは確かだが、決勝に限っていえばこれまでどおりのチームだった。トニ、トッティはまったく機能しなかった。頼みの綱はピルロプレースキックのみ。ただ、その唯一の武器で得点を決めたことが勝敗を分けたのだろう。
PK戦は敗者はいない、といわれる。事実ワールドカップの記録上ではPK戦は「引き分け」扱いになる。それでもそこに、紛れもなく勝者と敗者は存在するのだ。最後の最後でメンタルを保てなかったフランスと、「忍耐」という文字を刻み続けたイタリア。「イタリアはPK戦では勝てない」というジンクスを破ったのは、そのメンタルだったのだろう。
個人的にはイタリアの優勝は喜べない。ただ、彼らの戦いぶりには拍手を贈るしかない。そういう試合だった。ある意味ではこの18回目のワールドカップを象徴するような試合だったことも確かである。
ジダンよ、さらば。