『泣く侍』中山昌亮 1巻【bk1】 2巻【bk1】

2巻がつい先日出て、1巻の感想もまだ書いてないことに気付いたので一緒に。『オフィス北極星』(真刈信二原作)、『PS 羅生門』(矢島正雄原作)『迷彩都市』(我孫子武丸原作)と、これまで原作に恵まれてきた感もあり、大ヒットはしないまでも手堅く面白いマンガを描き続けてきた中山昌亮が時代マンガに挑戦。
いわゆる剣豪ものでありながらも、そこはこれまで名だたる原作者たちと付き合ってきただけに、一筋縄ではいかない仕掛けになっている。藩のお家騒動に絡めて、一家を失い、真実を告発するため姪と共に江戸に旅立つ主人公・総次郎。「泣く侍」とは、総次郎が泣きながら剣を振るうと無敵コマンド発動、というところから来ているが、それが単なるキャラの色づけでなく、その涙に意味があるのがいい。
また、そんな総次郎を狙うのが藩の追っ手だけでなく、公儀隠密、そして剣友であり、同時に姉一家を殺した張本人・伊藤。総次郎との闘いで視力を失った伊藤は、自我を失い、ただひたすら総次郎を殺すことだけを目的として彼を追いかける。
1巻ではおおよそ、ここまでのくだりが描かれるが、2巻に入って追っ手の勢いはいや増す。そしてさらに鍵を握る人物が現れる、という王道的展開。目新しさことないものの中山昌亮の絵柄と相俟って地に足着いた時代物として読めるマンガとなっています。
というか今となってはこうした主人公とライバルという関係を当初から規定して書かれたマンガってのは意外に少なくて(ライバルはいてもすぐ横道に逸れたり、そもそもライバルが途中で変わったりするしな)、それが命の遣り取りをするとなると、やはりそれだけで血沸き肉踊るものがあるなあ。

泣く侍 1 (SPコミックス)

泣く侍 1 (SPコミックス)

泣く侍 2 (SPコミックス)

泣く侍 2 (SPコミックス)