出版業界の現状をシニカル目線でちょっとだけマジメに考えてみる その1

また、まとまってもいないのにつらつらと勝手な思いつきを書こうと思う。

基本的にビジネスで今よりも「売り上げを上げたい」と思ったら、大きく分けて以下の3つのポイントしかない。

  • 商品単価を上げる
  • 顧客単価を上げる
  • 顧客の数を増やす

売り上げではなく利益を上げたい、という場合は「コストを下げる」という方法などもあるわけだが、それはまたベクトルが違うので、今回は割愛。


で、これ自体の考えについて一企業的な考え方というのはよくある話なんだけど、「業界」という全体像で捉えた話というのが、今の日本の産業界ではすごく必要になっていると思う。


代表的な例でいえば、自動車業界で「若者の自動車離れ」なんて言葉でいくら誤魔化しても当たり前だが売り上げは伸びないし、救われるわけではない。
上記3つのポイントでいえば、商品単価を上げてでも買ってもらえるような魅力的な商品を作るか(ただし、競合との価格競争は免れない)、やはりこれもまた魅力的な商品を早い回転で発表して、ユーザの買い替えサイクルを短くするか(現在の産業構造の大部分はここに依存していると個人的には感じる、それこそが疲弊構造を招いているとも思うがこれは余談)、若者にも自動車に乗ってもらえるようにするか、若者以外で新たな客層を獲得するか、といったことをしなくてはならないわけだ。

当然、自動車業界も色々考える。
商品単価に関しては業界全体で足並み揃えばできるけど、それはカルテルや談合になるし、競合との価格競争考えると簡単にはできない。ベンツとかロールスロイスくらいだろう。

顧客単価を上げる(購入サイクルを早める)ことと、商品の性能を高めることが矛盾するジレンマに陥る、という本質的構造もなかなか変え難い。ただし、「エコカー」という新規需要を生み出すことで、多少は改善された。

で、今最も業界(個の企業ではなく全体として取り組もう)としてを力を入れなくてはいけない部分として「顧客を増やす」というポイントが注目されているわけである。

自動車に関する税金を見直せという動きもそうだし、法律改正への動きもそう。もちろん業界全体だけじゃなく、会社ごとにも動きがあって、某社が若者を取り込もうとして訳のわからない意味不明のWebサイトとキャンペーンやっちゃうのもそう。周辺産業である自動車保険業界が外資のおかげで値段が安くなっているのも、自動車業界全体の流れのひとつだろう。
少ないパイを食い合って、互いに傷つけ合うだけではジリ貧だから、業界全体で頑張ろうね、という構造にようやく転換してきたわけだ。


ここまでは私のあくまでもイメージであって、ちゃんとした経済評論家の人から見たら「全然違うよ」という話だったらスミマセン。


で、非常に長かったですが、ここまでが前段です。
この自動車業界に負けず劣らず、業界としてシュリンクしているのが音楽業界と出版業界なわけで、音楽業界のことはよくわかりませんが、出版業界に関しては一応足を突っ込んでいるので、実情も含めて、個人的には危機感を非常に持っています。
では、3つのポイントについて出版業界としてはどういった動きがあるのか。

まあ、商品単価を上げる、ってのはなかなか難しいんですが、その上でさらに話がややこしいのが「再販制」の問題と、「本の値段のつけ方」というものがそもそもよくわからん、という2点のせいで単純にうまくいかない、ということが出版業界の場合はあるんですな。

この辺は話し出すと再販制を語るだけで長くなるので、ひとまず置いておき、それはそれとして、「価格が高い」商品については各社独自の判断で最近は多く出始めています。これは売り上げの問題も大きいですが、利益構造の変化という点についてのほうがおそらく貢献度は高い。
宝島社を中心とした付録併売商品もそうだし、豪華本もそう。方法論的にはディアゴスティーニの週刊シリーズなんかもこれにあたる。

とはいえ、自動車業界の話とも同様、商品自体を変えないと価格もなかなか簡単には変えられない構造というのは致し方ない部分もあるわけです。


では「顧客単価を上げる」という点についてはどうなのか。これはある意味悪い方向に走っていると思います。要するに、今は本を「読む人」と「読まない人」の二極化が進んでおり、一人当たりの顧客単価は上がっているけど、顧客の数が減っている、ということです。
しかもそれがマズいのは、業界が狙ってそうしたものではない、という点。いつのまにかそうなっていたわけです。

イヤ別に顧客単価が上がっているのはいいことじゃね?という意見もあるかと思いますが、問題はここが徐々に飽和状態に近づいている、という点です。当たり前ですが、顧客の可処分所得には限界があるし、読む量にも限界があります。
私自身、年間20万近く書籍・マンガにお金を使いますが、これ以上増やすことは正直難しい。
しかも、意図してこの状況を作り上げたのなら、まだ「次のステップ」と考えられるかもしれませんが、そういうわけでもないので、手を拱いているような状態です。


では、出版業界として、現状の問題点がどこにあるのか、どういった手を打つ必要があるのか、というあくまでも私の勝手な自論をについて次回に述べたいと思います。 < こんだけ書いといて次回かよ!