昨日は退社後に眼科へ。大分回復してきた。視力もある程度戻ってきて、違和感はほぼない。まだ目薬は手放せないが。3ヶ月近くかかっての回復だったので、私もそうだがむしろ医者の方が胸を撫で下ろしていた。一時は手術の話も出ただけに(いうほど大変な手術ではないらしいが)ホッと一安心。まあ、油断してまた悪化したら最悪なのでもうしばらくは大事に行きたいと思う。
帰宅後久々に、といっても一週間ぶりだが、うどんを作ったら珍しく文句なしのつゆができて満足。しかし毎回分量やタイミングは適当なので同じものを作る自信はない。むしろいつもの胸肉58円ではなく安売りしていたモモ肉68円を採用したせいなのかも。意味ないじゃん。
で、DVDで『トーク・トゥ・ハー』を見る。これまた予想と全然違う話だったなあ。スペイン映画は普段はまったく見ないのでその意味でも面白かった。感想は↓。
そうそう昨日の本屋大賞の話だが、つまるところこういった賞というのは選考員(この場合は書店員)の自意識の問題ということになるのだろう。ただ、これに関してはもう個々の人間の問題であるし、現場の人間の自意識が過剰になれば余計に拙い結果になる可能性もある。万人が納得するランキングは存在しない。それを理解した上で、ただ後発の賞やランキングであれば、ある程度の独自性というものは見えて欲しいものだ、という個人的な希望。

購入本

  • 武装錬金 -10-』和月伸宏 【bk1】
    最終巻。まあ私にとっては前巻で終わっていたので(深川さんに指摘されるまで続いていることに気づかなかったし)蛇足以外の何物でもない巻なのだが、果たしてやはり蛇足であった。まあ、今時の少年マンガとしては珍しいくらいの大団円でしたね。『るろうに剣心』で描かれていた「善と悪」の葛藤とかはどこかに吹き飛んでしまってただのお気楽マンガになってしまっていた。作画的にはグロイ描写とかもしてたのに、ストーリーが平版というバランスの悪いまま終わってしまったというかそれが原因で打ち切られた、という印象ですな。10巻かあ。正直3巻分くらいしか内容がないと思う。ただまあ、武装錬金というギミックとキャラ設定自体は色々やれそうで、それが二次的な使い方で人気があるのはわかりますね。まあ「戦う」こと以外になにかがないとやはり今のジャンプで生き抜くのは難しいでしょう。ページ合わせに読み切りと後日談が掲載されています。まあ、どちらもそんなに。思うに和月椎名高志の方向で進んでいる気がしますが、本家椎名高志がそうであったように、今はスランプの時期なんじゃないかなあ。椎名同様復活してくれることを祈る。

武装錬金 10 (ジャンプコミックス)

武装錬金 10 (ジャンプコミックス)

検索のフシギ

Amazonでは「よしながふみ」を検索すると『フラワー・オブ・ライフ』も『大奥』も出て来ないので、「おかしいなあ」と思って「よしなが ふみ」で検索したら出てきた。これって不便じゃね?。普通著者名は苗字と名前でスペースとか必要としてないのに。というわけで他の平仮名の作家はどうなのだろうと思って調べてみた。「はらたいら」は出てくる結果が微妙に変わる。「ゆうきまさみ」ではスペースがないと『パトレイバー』しか検索できない。「かんべむさし」はスペースがないと正しく結果が出ない(冊数0)。「すぎやまこういち」も同じく。ただし、「さそうあきら」の場合はほぼ目的に合致した結果が出てくる。
ということはAmazonは姓と名を別データとして入力し、インデックス作成の段階で平仮名の結合を行っていないということだな。「さそうあきら」に関してはどうなっているのかわからんが。ちなみに「ヒキタクニオ」は微妙に結果が違うが、逆にスペースがない方が多く結果が表示されるのでカタカナの結合は行われているということだ(まあ海外の作家とかは皆カタカナだから当然なのだが)。
この辺の仕様はデータベース屋としてわからんことはないのだが、やはり不便というか問題だと思う。インデックス作成の段階で苗字と名前を結合したインデックスを別作成するとか対処した方がいいと思う。まあ全部そうしちゃうとインデックスが重くなるし、かといって平仮名の作者名だけ、というのはシステム的にどう組み込むのか考えると面倒だけど(仕様としては楽だが入力側としては実践しにくいだろう)。
ちなみにbk1ではどちらでもほぼ問題ない結果が出てくる。かつては姓と名を分けて入力すると検索されない、というようなこともあったが今ではテーブル構造か項目形式を変更したのだろうか。Amazonbk1のデータベース構造の違いは結構気になるかも。教えて中の人。

『トーク・トゥ・ハー』(2002 スペイン)

監督:ペドロ・アルモドバル、出演:ダリオ・グランディネッティ、ハビエル・カマラ、レオノール・ワトリング、ロサリオ・フローレス
公開当時とても気になっていて観に行きたかったのだが行けずじまいで、そのまま忘れかけていた。確か以前に見たかった映画があったな、と思い出してようやく見た。
スペイン映画でありながらアカデミー賞脚本賞を受賞した本作品。「昏睡状態の女性に話しかける」というシチュエーションだけ聞くと今時の「泣ける映画」と思ってしまいそうだがあにはからんや、そんな単純な映画ではなかった。これはとても単純でいて深遠な映画ですよ。
冒頭、前衛的なバレエのシーンから幕を開ける。そのバレエを鑑賞する二人の男。一人はこのバレエを理解できず隣の男を見やる。隣の男はバレエを見て涙を流している。理解できない男の名はベニグノ。泣いている男の名はマルコ。隣り合った席に座っただけの二人はやがて思いも寄らぬ再会をすることになる。
次のシークエンスに入ると、看護士の格好をしたベニグノが一人の女性をマッサージしつつ、見てきたバレエの内容を彼女に向かって語りかける。理解出来ていなかったはずのバレエの内容を「面白かった」と語るベニグノ。やがて彼が語りかける相手・アリシア植物状態に陥り眠り続けている女性だということがわかる。ベニグノの献身的な介護。それはアリシアに対する愛であることがわかる。
ここまでは確かに『トク・トゥ・ハー』というタイトルに偽りなしの平凡な映画の幕開けだ。しかし、物語はここから予想しない方向に進む。そして、結局最後まで当初の平凡さには帰ることなく終わるのだ。
ペドロ・アルモドバルは『オール・アバウト・マイ・マザー』という映画で注目を浴びた監督らしいが、とにかくその作劇法が巧妙だ。冒頭のシークエンスの見せ方、ベニグノという人物造型とその明かし方。そしてもっとも巧いのがこの物語にマルコという人物を絡めたことと、その絡め方だ。この物語の根幹だけを取り出せば、ベニグノとアリシアという二人の物語になる。しかしそこにマルコ、そしてリディアという存在を加え、マルコがベニグノとアリシアに引き寄せられる必然性を作ったのが巧い。
さらには劇中に挿入されるサイレント映画の淫靡さや、アーティスティックな映像美。闘牛とバレエという対比。これらがしっかりと物語に寄与している。その結果が肌に合わない、という人もいるかもしれない。私も合うか合わないかでいったら合わないほうだと思うのだが、それ以上にこの見せ方の巧さが際立っていた。
詳しいあらすじは書かないが、多くの人がこの映画を見てベニグノの愛の形に対して嫌悪感を覚えることだろう。確かに彼の愛は現在の、それも常識的な視点から見れば犯罪であり、「キモイ」ものである。「ただこれもひとつの愛の形」などというつもりはないが、よくいう「愛とは与えられるものではない、与えるものなのだ」という言葉を信ずれば彼はまったく間違ったことをしていない。彼にとっては彼女から何かを与えられる必要はないのだ。むしろ、彼という人間を拒否せず受け容れてくれる(それが文字通りの無意識であろうと)彼女という存在はなにものにも代え難い存在であったろう。
そう、この映画の最大の肝はアリシアという女性の存在である。そんなことは当たり前なのだが、この映画では彼女の視点と感情が完全に排除されていることが物語を深遠に見せる最大の効果となっているのである。
『眠れる森の美女』の話を読んで、「美女の意識がないのに勝手にキスするやつなんてサイテー」という感想を持つ人はあまりいないだろう。それは勿論キスする男性が王子だから、というのが最大の理由ではあるが、美女の意思が無視されていることには変わりがない。この映画でもアリシアの意思は確かに無視されている。しかし、彼女が真に思っていることは最後までわからない。ベニグノの愛の発露が生んだ結果、それだけが提示されている。
感動的であるかどうかは別として、あらゆる部分において考えられた、特に人物の配置と造型には卓越したものを見せてくれる映画。ベニグノの生い立ち、マルコがライターであること、アリシアバレリーナであること、彼女の父親が精神科医であること、リディアが闘牛士であること、その全てに意味があり、機能している。その巧さに舌を巻いた。
そして互いの感情の遣り取りにおいて全てに「なぜ」の答えを見せなかったのもこの映画に奥行きを与えている。ベニグノは「なぜ」アリシアに惚れたのか。マルコは「なぜ」リディアに興味を持ったのか。リディアは「なぜ」よりを戻したのか。そしてベニグノとマルコは「なぜ」互いを理解しあったのか。そうした「なぜ」が想像は出来るが決して明確でなく描かれている。とても興味深い映画だ。
最後につまらんことだが、アリシアを演じたレオノール・ワトリングがとても愛らしかったことを記しておく。ラスト近くの彼女は本当に魅力的だった。彼女は『死ぬまでにしたい10のこと』でハリウッド進出もはたしているようなので、そちらもチェックしてみたい。

トーク・トゥ・ハー スタンダード・エディション [DVD]

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