『果断 隠蔽捜査2』今野敏 【bk1】

前作『隠蔽捜査』(→レビュー)の一件で、警察庁から大森警察署の署長へと異動させられた竜崎。しかし警察庁とはかけ離れた現場でも相変わらずの合理主義を貫き通し、部下達から早速「変人」扱いされる。そんな中、サラ金強盗が逃亡中に大森署管内で捕まる。そして発生する立てこもり事件。竜崎は自ら現場に赴き、現場の指揮を執る。しかし、現場での失態の責任を問われる。
前作であまりにも素晴らしいキャラクターぶりを発揮した竜崎が、今度は捜査現場に登場。「東大以外は大学ではない」といって憚らない四角四面さは相変わらずだが、一度彼のキャラクターを知ってしまうと、とてもキライにはなれない。
本作でもその魅力は余すところなく描かれており、その合理主義と正論ゆえに周囲との軋轢を生みつつも、その壁を取り壊していく姿には快哉を叫びたくなるほどである。
事件、というかミステリ的な展開としては前作が、2軸を持っていただけに、本作はやや小振りな感じを与えるが、後半での一気呵成な展開。そして竜崎のキャラクターを最初から知っているがゆえに、終始楽しめる点など、前作に劣る出来栄えにはなっていない。
個人的には作中で、自分の心に迷いが生じた竜崎が、『風の谷のナウシカ』(タイトルは書かれていないが明らかにナウシカ)を見て、ナウシカの生き様に力を貰うシーンでは、「今オレはナウシカから力を貰っているお前と同じように竜崎に力を貰っているよ!」と感じてしまうくらい、竜崎というキャラクターの持つ力に力づけられた。
小説を読んで、こんなに主人公から力を貰ったのはいつ以来だろう。マンガではよくあるのだが、小説ではとんと記憶がない。共感とは違う、生き方にパワーを貰った。おかげでずいぶん救われました(この頃ちょうど苦しんでいたので)。
そういう意味で前作『隠蔽捜査』と併せて是非読んでいただきたい本。まっすぐな男がまっすぐに突き進む話。だが、それがいい。とにかくオススメ。

果断―隠蔽捜査〈2〉

果断―隠蔽捜査〈2〉